バッテリーと荷室は「モア・イズ・モア」! フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロSへ試乗

公開 : 2024.09.18 19:05

フォルクスワーゲンID.7に、ステーションワゴンのツアラー登場 プロSなら86kWhのバッテリーで航続690km 印象的な荷室の広さ サルーンと遜色ない動的能力 英編集部が試乗

モア・イズ・モアなツアラー・プロS

モノを評価する考え方として、「レス・イズ・モア」という名言がある。より少ない方がより良い、といった意味を持つものだが、AUTOCARの読者なら耳にされたことはあるはず。

ただし、ファミリーカーの荷室の広さや、バッテリーEVが積む駆動用バッテリーの容量に関しては当てはまらないと思う。基本的に「モア・イズ・モア」なことは明らか。今回試乗した、フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロSが、それを物語っている。

フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロS(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロS(欧州仕様)

フォルクスワーゲンの大きな電動サルーン、ID.7は、通常のプロ仕様でもわれわれを唸らせる実力を有する。AUTOCARでは、2024年のベストサルーンとして、このモデルを選出したほど。有力な、テスラモデル3BMW i5などのライバルを抑えて。

そんなID.7で、航続距離がさらに長く、より沢山の荷物を運べる仕様が存在したら? もっと良いに決まっている。

ID.7 ツアラー・プロSは、まさにそんなクルマだ。大きなステーションワゴンで、英国価格はサルーンのID.7 プロより4590ポンド(約88万円)お高いだけ。安くはないが、その価格を納得させる仕上がりにある。

航続距離は690km 印象的な荷室の広さ

このプロSというグレードは、サルーンでも選択できる。リア側に搭載される駆動用モーターの最高出力は、ひとつ下のプロ・グレードと同じ286ps。しかし駆動用バッテリーは、13モジュールで構成される86kWhのリチウムイオンへアップグレードされる。

航続距離は、サルーンで708km。通常のプロは616kmだから、100km近く長い。ステーションワゴンの、ツアラー・プロSでは690km。空気抵抗を示すCd値が0.23から0.25へ悪化するため短くなるが、かなりの長距離だといっていい。

フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロS(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.7 ツアラー・プロS(欧州仕様)

現実的な環境ではそこまで走れないとしても、今回の試乗の限り、特に気を使わずに480km以上は余裕な様子。しかも新しい駆動用バッテリーは、最大200kWまでの急速充電にも対応している。

荷室の広さも印象的。全長が4961mm、全幅は1862mm、全高は1551mmと大柄だから当然とはいえ、605Lの容量がある。60:40に分割されるリアシートの背もたれを倒せば、1714Lの大空間を生み出せる。

流麗なサルーンから、リアピラー後方が伸ばされたシルエットがゆえに、実用性を強く意識したステーションワゴンほど広いわけではない。それでも、バッテリーEV市場では、かなりの競争力を持つことは間違いない。ルーフレールも追加されている。

ちなみに、クロスオーバーのフォルクスワーゲンID.4より荷室は広い。必ずしも、背の高いモデルが実用性で勝るとはいえない。BMW i5 ツーリングは、後席を起こした状態で570Lだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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