四輪駆動を得た4代目の究極:ゴルフ R32 ブッソV6のFF:147 GTA 初代から5代目 比較試乗(4)
公開 : 2024.09.21 17:45
1974年の登場以来、実用的で高効率、運転の楽しさを提供し続けるVWゴルフ ジウジアーロの初代から、ワッペングリルの5代目まで 歴代の魅力を、ライバルとの比較で英国編集部が再確認
もくじ
ー4代目の究極版 四輪駆動でV6のR32
ーV6ブッソ・ユニットをFFハッチバックへ
ーフェラーリV8へ迫るソウルフルなサウンド
ー「スーパー」ホットハッチを予見していた
ーゴルフ R32(Mk4)と147 GTA 2台のスペック
4代目の究極版 四輪駆動でV6のR32
フォルクスワーゲンは、市民の多様な意見へ耳を傾ける。不都合な内容でも、ブロックすることはない。
3代目ゴルフに2.8L V6エンジンを押し込んだVR6は、パワフルさにシャシーが追いついていなかった。メルセデス・ベンツやBMWに及ばないという印象は、フォルクスワーゲンの開発者を納得させなかった。
結果として、1997年に4代目へモデルチェンジしてから暫くの間は、V型5気筒のVR5に留まった。前輪駆動でV6エンジンのゴルフは、3代目限り。満を持して2000年に姿を表した新世代のVR6は、四輪駆動化されていた。
この技術は、アウディ由来のハルデックス・システム。加えて、アウディTTに搭載されていたクロスレシオの6速MTと、独立懸架式サスペンションも奢られた。3代目からグレードアップした内装の雰囲気もあって、「高級」なゴルフという説得力があった。
そして4代目が熟成を増した2002年、究極版といえるR32が登場する。VR6以上にアウディの技術が投入され、V6エンジンは3.2Lへ拡大。クイックなステアリングラックと引き締められたサスペンションが、スポーティな走りを引き出した。
ホットハッチ・ファンの興奮を一層誘ったのが、通常のゴルフと差別化された容姿。低く伸びたフロントバンパーには大きなエアインテークが開けられ、テールパイプは2本出し。アルミホイールは18インチへ拡大された。
車内には、サイドサポートの高いバケットシート。歴代で、最も刺激的なゴルフの1台といえる内容だった。
V6ブッソ・ユニットをFFハッチバックへ
20世紀から21世紀へ推移する前後は、フォルクスワーゲンにとって躍動的な時期となった。ドイツの自動車産業は黄金期を迎え、目先の利益を追い求めるという姿勢は薄らいでいた。
他方、同時期のアルファ・ロメオが生み出したのが、伝説のブッソ・ユニットを搭載したハッチバック、147 GTAだ。ゴルフ VR6へ影響を受けたアイデアだと考えて、間違いはないだろう。
とはいえ、アルファ・ロメオは1994年のGTV、タイプ916へ3.0L V6エンジンを載せており、その下地は存在していた。広くないエンジンルームへ押し込んだため、整備性は非常に悪かったが。
技術者のジュゼッペ・ブッソ氏が設計を手掛けたV6エンジンは、フォルクスワーゲンのVR6のようにコンパクトではなかった。それでも、美しさ優先で導かれた147のシルエットはフロントノーズが長く、大きな改造なしで収まった。
ドライブトレインは、同時期のアルファ・ロメオ156 GTAから流用。ダブルウイッシュボーン式のリアサスペンションやブレーキ、ショートなステアリングラックも同様だった。ボディはフェンダーアーチが広げられ、専用のエアロキットで着飾った。
ゴルフ R32も147 GTAも、操縦性を強みとしたモデルとはいえない。だが、アルファ・ロメオの方が技術的には一歩先にあり、フロントヘビーといえた重量配分の影響を最小限に留めていた。