初代の哲学を回復:ゴルフ GTI(Mk5) ボルボの5気筒ターボ:フォーカス ST 初代から5代目 比較試乗(5)
公開 : 2024.09.21 17:46
1974年の登場以来、実用的で高効率、運転の楽しさを提供し続けるVWゴルフ ジウジアーロの初代から、ワッペングリルの5代目まで 歴代の魅力を、ライバルとの比較で英国編集部が再確認
もくじ
ーフォードから技術者をヘッドハンティング
ーボルボから2.5L 5気筒エンジンを流用
ー乗り心地と操縦性を見事にバランス
ー高校教師も若者も、同じくらい楽しめる
ーゴルフ GTI(Mk5)とフォーカス ST(Mk2) 2台のスペック
フォードから技術者をヘッドハンティング
2000年代のホットハッチ・ファンは幸せだった。多くのメーカーが参入し、ガソリンエンジンの性能は向上する一方。0-100km/h加速時間は、0.1秒単位で刻まれていった。
4代目で人気を回復したゴルフは、以降でGTIのプレゼンスも復活。どの世代のGTIが最高か、という楽しい悩みも生まれた。そんな中で、歴代最大のアップデートを掴んだ世代が、この5代目だといえるだろう。
新世代の開発でフォルクスワーゲンを刺激した競合が、フォード。控え目な1.6Lエンジン仕様でも、1998年に発売されたフォーカスは素晴らしい仕上がりだった。マルチリンク式サスペンションを備える有能なシャシーは、4代目ゴルフの走りを霞ませた。
この課題解決のため、フォルクスワーゲンが選んだ手段はヘッドハンティング。会長職にあったフェルディナント・ピエヒ氏が、当初狙いを定めたのは技術者のリチャード・パリー・ジョーンズ氏だったが、そのグループ副社長は自身より高給を得ていた。
そこで、ウルリッヒ・アイヒホルン氏を招聘。その頃、フォーカス・ベースのミニバン開発へ携わっていたが、計画は中止になり、移籍を躊躇しなかった。かくして2003年に発売された5代目ゴルフでは、マルチリンク式サスペンションがリアに採用された。
むしろシャシーの設計自体が、フォーカスへ非常に近かった。優れたベースがあれば、優れたGTIも半分完成したようなものだった。
ボルボから2.5L 5気筒エンジンを流用
加えて、フォルクスワーゲンは市場の声にも応えた。通常のゴルフとの差別化を明確にするべく、フロントグリルにはレッドの差し色を約10年ぶりに採用。テレダイヤル・デザインのアルミホイールと、僅かにシャープなフロントバンパーも専用設定された。
車内では、タータンチェックのシートが復活。ボンネットの内側には、アウディA3から搭載が始まった2.0L 4気筒ターボエンジンが収まった。動力性能でも、GTIはクラスをリードする立場へ返り咲いた。
対するフォードも、フォルクスワーゲンの動きを眺めていただけではない。新しい2代目フォーカスに、2.0Lターボエンジンを搭載したSTが登場するという噂は、発表前からグレートブリテン島では広まっていた。
しかし、フォード傘下にあったボルボ由来の、2.5L 5気筒ターボエンジンが載ることまでは予想されていなかった。発売は5代目ゴルフ GTIの翌年で、英国価格は1500ポンド低く設定され、最大のライバルを強く意識していたことは間違いない。
2代目フォーカス STを突き動かす、2.5Lエンジンのトルクは今でも印象的。低回転域から驚くほど力強く、フルスロットルでは特有の5発ビートを車内へ盛大に響かせ、速度をグングン上昇させる。
特に、中回転域でパワフル。高域まで回す必要性を感じない。実際、5000rpmを過ぎると、パワー感は薄れていく。