「V型12気筒スポーツカー」の魂を探せ アストン マーティン “初代” ヴァンキッシュで欧州横断 歴史アーカイブ

公開 : 2024.09.06 11:45

9月3日、アストン マーティンが新型「ヴァンキッシュ」を発表した。V12エンジンを搭載するフラッグシップモデルである。同車のスピリットを思い出すため、2005年の試乗レビューを振り返ってみた。

英国ブランドの旗艦モデル、初代のスピリットを振り返る

英国のアストン マーティンが9月3日、新型「ヴァンキッシュ」を発表し、V12エンジン搭載のフラッグシップモデルが6年ぶりにラインナップに返り咲いた。

最高出力835ps、最大トルク102kg-mという驚異的な性能に加え、先代のDBSよりも剛性の高いシャシーを備えており、スーパーグランドツアラーの王座を争う構えだ。

初代アストン マーティン・ヴァンキッシュ
初代アストン マーティン・ヴァンキッシュ

しかし、測定可能な資質がすべてではない。時には、純粋な魅力だけでハートを射抜かれることもある。初代ヴァンキッシュがまさにそうだった。

そのカリスマ性を思い起こすために、AUTOCAR英国編集部が2005年7月にヴァンキッシュSで欧州を横断したときの特集記事を一部抜粋し、ここに掲載する。

2005年7月26日:ランエボより遅い。運転しづらい。古臭いスイッチギア。大好きだ。

クルマの素晴らしさを見抜く方法はいろいろあるが、800kmを猛スピードで走った後の姿ほど信頼できるものはない。

もしクルマから降りて、泥まみれのサイドと虫だらけのノーズをひと目見て洗車場を探し始めたら、優れているかどうかはともかく、素晴らしいクルマでないことは確かだろう。しかし、もし現地の動物相が二次元化された数千の例を目の当たりにして、最後の輝かしい1kmを追体験できるのであれば、それは素晴らしいクルマである。

初代アストン マーティン・ヴァンキッシュ
初代アストン マーティン・ヴァンキッシュ

一部のクルマは、こうすることでより良く見える。アストンのヴァンキッシュSが販売店でピカピカに磨き上げられていたとしても、欧州の高速道路を数百km走ったあとの姿に比べれば大したことはない。何時間もかけて積み重ねられた “ゴミ” が、単なる美しさに目的と背景を加え、走り始めた時よりもはるかに心を揺さぶる光景を作り出している。

出発地点はニューポート・パグネルだった。この場所とアストン マーティンとの結びつきは並々ならぬものがあり、道路標識でさえ「アストン マーティンの本拠地」と宣言している。

しかし、ここはアストン マーティンが誕生した場所(フェルサム)でもなければ、多くのモデルが生産された場所(ブロックスハム)でもなく、現在の本社がある場所(ゲイドン)ですらない。しかし、我々は皆、ニューポート・パグネルがアストン マーティンの真の故郷だと考えている。

取材班の目的は、現在もニューポート・パグネルで生産されている唯一のモデルであるヴァンキッシュに乗って、ドイツのケルンまでドライブすることだった。ケルンでは、巨大なフォード工場のごく片隅で、アストン マーティンのエンジン生産がすべて行われている。

ニューポート・パグネルは1959年以来ノンストップでアストンを生産してきたが、ヴァンキッシュがその最後のモデルとなる。筆者はロンドンから北上して現地に向かいながら、デビッド・ブラウン氏やヴィクター・ガントレット氏のような元会長らは、アストンの魂の大部分がドイツ人によって生産されていることをどう感じるだろうかと考えた。

ゲイドンの新しい工場は素晴らしいが、アルミ板をハンマーで叩く男たちは見当たらない。古い旋盤も、耳に鉛筆を挟んだ作業員もいないが、彼らはまだニューポートにいる。ニューポートで初めて量産されたDB4のプロトタイプを見つけることもできた。

筆者が話をした人たちは、2008年にヴァンキッシュが引退すると、この施設が売却されるのではないかと心配しているようだったが、そのような計画はないと聞いている。アストン マーティンは旧工場でサービスやレストア事業を拡大しており、そこではまだ職人技が活かされている。これが将来にわたって存続することを願ってやまない。

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • 林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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