【爆速ミニバンと小型SUVがやって来る】 中国BEVブランド「ジーカー」日本上陸か その名も「009」と「X」

公開 : 2024.09.06 17:45  更新 : 2024.09.07 12:10

0-100km/h加速4.5秒の爆速ミニバン

シートは3列6名および7名構成、2列目は左右独立型のキャプテンシートを採用する。

高級ミニバンでは必須装備となったマッサージ機能は黒クロームメッキ仕上げのボタンで操作するタイプとなっており、むやみにタッチパネル式にしていないところに好感を覚えた。テーブルは旅客機にあるようなアームレストから展開する方式で、立て付けもしっかりとしている。

中国BEVブランド ジーカー「009」。
中国BEVブランド ジーカー「009」。    加藤ヒロト

ほかにも驚かされたのは、スライドドア内側に内蔵されている小型のタッチパネルだ。左右のウィンドウに加えてガラスルーフのシェードが操作可能で、そのすぐ隣には時計やエアコンを操作できる簡易的な円形ディスプレイも装備する。

これまでにさまざまな中国メーカーのミニバンを体験したが、これはジーカー「009」独自の装備だ。車内オーディオには20個のスピーカーで構成されたヤマハ製のサウンドシステムを搭載し、極上の音質体験を創りだす。

エアサスペンションを搭載しているものの、乗り味は意外と硬めで、ここでもスポーティさに振っていると感じた。0-100km/h加速を4.5秒でおこなう加速性能が、果たして本当にミニバンに必要かは疑問だが、ドライバーズカーとしてはとても楽しい運転体験となった。

もちろん、後席に座ってくつろぐのにも広々としている空間なので、試乗する機会があったらどちらのポジションも体験するべきだろう。

装備の割に価格は高め? ボルボEX30とプラットフォーム共有の「ジーカーX」

一方、ジーカーのコンパクトSUV「X」も試乗したが、簡単に申し上げると、装備の割に価格が高い。

エクステリアデザインはジーカー共通のデザインを採用しており、全長×全幅×全高が4450×1836×1572mm、ホイールベース2750 mmのボディは小さめなクーペ的とも言える。4人乗りと5人乗りが選択可能だが、大人5人が乗るには少々狭く、4人でちょうど良い空間設計である。

中国BEVブランド ジーカー「X」。
中国BEVブランド ジーカー「X」。    加藤ヒロト

駆動方式は出力272ps/トルク343Nmの後輪駆動と、428ps/543Nmの四輪駆動の2種類のみと、「009」よりもシンプルだ。バッテリーも全グレード共通で容量66kWhとなる。

内外装の質感は上々なものの、一方でサスペンションのチューニングは「エントリーモデル」相応という印象を受けた。はっきり言ってしまうと、そこまで良くはない。

また、試乗したのは中国市場で販売されている左ハンドルモデルだったため、右ハンドルだと事情が異なるかもしれないが、左前輪のタイヤハウスが異様に内側に食い込んでおり、不自然な位置に左足を置くしかなかった。このため快適なドライビングポジションが決めづらく、終始不快だった。

これで価格が安いといったことならまだ競争力もあるのだが、実際はライバル車種のフォルクスワーゲンID.3の倍近い20万元(約408.4万円)からと、かなり強気のメーカー希望小売価格だ。

実際、中国ではこの高価格が影響して販売は不振、ここ最近は月間販売台数500台以下の月が連続していた。2024年7月は1231台を販売と久々の大台突破となったが、これでもジーカーのラインナップの中でもっとも売れていない車種には変わりなく、Xよりも2倍高い009(約896.5~1059.9万円)の方がまだ売れているのだ。

日本仕様の詳細はまだ一切明らかでないが、Xの場合は日本でのメーカー希望小売価格が高くとも500万円を切らないと勝負は難しい。同じ中国メーカーであるBYDの販売するコンパクトBEV「ドルフィン」は、日本でのメーカー希望小売価格が363万円からで、中国では同等モデルが約265万円となる。

ジーカー車種は人を選ぶデザインなのに加え、ほとんど知られていない中国ブランドであることを鑑みると、BYDほど順風満帆ではないだろう。

ジーカーにとってどれほど勝算があるかは不明だが、相手をしなければいけないのはBEVではなく、同クラスのガソリン車・ハイブリッド車も含まれる。

いくら同クラスBEVの選択肢が少ないと言えど、消費者にとっては安くてサポートがしっかりしていれば、パワートレインの種類など関係ないのだ。

それでも日本市場に挑戦しようとする姿勢は応援したいし、引き続き注目していきたい。ボルボを傘下に収めて以降、急速にクオリティを上げているジーリーだが、果たして日本でどう受け入れられるかが見ものだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤ヒロト

    Hiroto Kato

    山口県下関市生まれ、横浜在住。慶應義塾大学環境情報学部に在学するかたわら、各自動車メディアにて「中国車研究家」として中国の自動車事情について「クルマ好き」の視点で多様な記事を執筆する。また、自費出版で中国モーターショーのレポート本「中国自動車ガイドブック」シリーズも手掛けている。愛車は1998年型トヨタ カレンと1985年型トヨタ カリーナED。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

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    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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