おめでとう30歳! アウディRS2でユーロトンネルを抜ける ポルシェと共作の象徴的ワゴン

公開 : 2024.09.22 19:05

これ以上改善しようがないダッシュボード

イメージ通りの、ノガロ・ブルーに塗られたドアを開くと、ブルー・アルカンターラで仕立てられたレカロシートが迎えてくれる。腰を下ろすと、ホワイトのメーターが気分を盛り上げる。

6速マニュアルのシフトレバー前には、補機メーターが3枚。すべてが正しい位置にあり、確認しやすい。これ以上、改善のしようがないように思えてしまう。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

今年の夏もグレートブリテン島は暑く、沿岸部でも気温は30度超え。エアコンが強力でうれしい。陽光を浴びながら南下する道のりは、至福の時間だった。

直列5気筒ターボのさえずりが、路肩の壁面へ反響して耳へ届く。アルミホイールは、控え目な17インチ。ロードノイズは、現代的なホットハッチより小さい。

惜しいことといえば、カップホルダーがないことくらい。同行したフォトグラファーのマックス・エドレストンが、持ち込んだコーヒーの置き場がないと困っていた。

ステレオデッキはカセットテープ。ブルートゥースはもちろん、外部入力も付いていない。退屈なFM放送はやめて、雑談を楽しむことにした。

これまで筆者は、ユーロトンネルを抜けるル・シャトルを何度も利用してきた。しかし今回は、このトンネル自体がテーマの1つだから、改めて観察してみた。

チケットで割り当てられた列車へクルマを導く、乗車ターミナルの迷路のような誘導路は面白い。この設計の妙には驚かされる。プロセスもスムーズだ。

30年の月日を忘れてしまう速さ

トンネルを抜ければ、眩しい太陽が照りつけるフランス。幹線道路から外れて、フランス北部の沿岸、ダンケルクの町へ立ち寄った。

RS2は、ブレーキペダルのソリッド感が乏しい。だが積極的に運転し始めれば、30年という過ぎた月日は忘れてしまう。3000rpmまで5気筒ターボを引っ張ると、本当に速いのだ。

アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)
アウディRS2 アバント(1994〜1995年/英国仕様)

レブリミットへ吸い込まれるような感覚は、胸をすくように爽快。素早く正確な変速を決めれば、B5世代のRS4へ迫るような勢いを楽しめる。

操縦性も素晴らしい。ただし、初めは大きいボディロールと、明確なアンダーステアに驚かされた。ブレーキを賢く効かせ、計画的にライン取りすれば、リズムに乗れる。出口では、タイヤを路面へ食らいつかせられる。

鮮烈なほどではないが、2速と3速を上手に操ることで、充足感へ浸れる。日が暮れるまで、駆け回っていたくなる。

あいにく、今日は時間がない。グレートブリテン島へ戻るには、エアコン全開で、入国審査の列へ並ぶ必要がある。辛口なブリュットを、1本そそくさと調達した。

RS2の古さを感じることの1つが、1702mmとスリムな全幅。車載列車の中を、簡単に走れる。全高も低い。近年のSUVでは、背の高いクルマ用の貨車を選ぶ必要がある。列車が設計された時代の平均的なファミリーカーと、現代のそれは違う。

「クルマの全幅が広がってきたので、対応する必要があります。列車は、そのアップグレードを控えているんです」。ル・シャトルの責任者の1人、デボラ・メレンズ氏が説明する。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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