生産終了まで押し寄せた注文! フォルクスワーゲンUp! GTI UK中古車ガイド 小粒なカッコ良さ

公開 : 2024.09.24 19:05

小さなホットハッチ、フォルクスワーゲンUp! GTI 走りが楽しく燃費は良好 小粒なカッコ良さ 生産終了まで注文が寄せられた人気者を、英編集部が振り返る

2023年の生産終了まで押し寄せた注文

フォルクスワーゲンUp!にGTIが追加されたのは、2018年。活発な走りを楽しめる小さなハッチバックとして英国では2大勢力になっていた、ルノートゥインゴ GTとスズキスイフト・スポーツの間へ、割り込みをかけた感じだった。

そのトゥインゴ GTやスイフト・スポーツより、英国価格はUp! GTIの方がお手頃。燃費が良く、運転は一層面白く、実用性も低くなかった。結果として、2023年に生産終了を迎えるまで、フォルクスワーゲンには注文が押し寄せた。

フォルクスワーゲンUp! GTI(2018〜2023年/英国仕様)
フォルクスワーゲンUp! GTI(2018〜2023年/英国仕様)

最高出力は119psで、0-100km/h加速は8.8秒。最高速度は196km/hと、どれも驚くほどの数字ではないものの、好調に英国では売れ続けた。今回は、この魅力を振り返ってみよう。

渋いクルマ好きは、大パワーを誇示するモデルより、ジャイアントキラー的な個性を好むことが多い。量より質を重視する。トヨタGR86やマツダMX-5(ロードスター)は、その典型といっていい。

この2台のエンジンは、4気筒の自然吸気。アクセルペダルを傾けた瞬間、回転数へ反映され、望んだパワーを引き出せるのが魅力の1つだ。

一方、Up! GTIは1.0L 3気筒ターボ。低域トルクと、6000rpmまで躊躇なく回る質感で、不満ない動力性能を享受しやすい。郊外の一般道を走らせれば、排気量がひと回り大きいエンジンのように感じるほど。

小ぶりなボディで、車重は995kg。最大トルクは20.4kg-mあり、初代ゴルフ GTIを凌駕する。高速道路の速度域に達すると、若干のパワー不足を感じてしまうのが、唯一の弱点だろう。

走りが楽しく燃費は良好 小粒なカッコ良さ

燃費は、カタログ値で20.9km/L。実際の環境でも、気ままに運転して14.0km/L以上は難しくない。実は筆者も1年弱所有していたが、積極的に扱っても13.8km/Lが下限だったと記憶している。

操縦性も素晴らしい。グリップ力が高いだけでなく、姿勢制御は安定し、動きは漸進的。落ち着きではポロ GTIに及ばないとしても、15mm低いスポーツサスペンションと8mm広いリアトレッドで、すばしっこい走りを堪能できる。

フォルクスワーゲンUp! GTI(2018〜2023年/英国仕様)
フォルクスワーゲンUp! GTI(2018〜2023年/英国仕様)

乗り心地も、ポロ GTIの方が滑らかだが、同時期のスイフト・スポーツやトゥインゴ GTより良好。ちなみに、トランスミッションは6速マニュアルのみ。トラクション・コントロールは、完全にはオフにできない。

装備は、小柄な割に整っていた。レッドの間接照明とエアコン、スマートフォン・ホルダー、ブルートゥース対応ステレオなどが標準。タータンチェックのシートと、5.0インチのインフォテインメント用モニターも備わる。

英国仕様のオプションリストには、シートヒーターやツートーン塗装、バックカメラ、オートエアコンなどが並んだ。2019年にフェイスリフト。新基準の排気ガス規制へ対応し、エンブレムが変わったが、基本的な見た目や装備に変更はない。

スキッと端正なスタイリングを描いたのは、巨匠、ウォルター・デ・シルバ氏。今でも古びた感じはしない。

走りの楽しさも、お財布に優しい燃費も、小粒なカッコ良さも、満遍なく満たしたUp! GTI。英国では1万ポンド(約192万円)前後で探せてしまう事実を、大いに喜びたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョナサン・ブライス

    Jonathan Bryce

    英国編集部。英グラスゴー大学を卒業後、モータージャーナリストを志しロンドンに移住。2022年からAUTOCARでニュース記事を担当する傍ら、SEO対策やSNSなど幅広い経験を積んでいる。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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