エイドリアン・ニューウェイ、昨年5位のアストン マーティンF1へ移籍「課題は明確」 独占インタビュー

公開 : 2024.09.11 18:05

「F1最強チーム」レッドブルで数々の勝利に貢献してきたエンジニア、エイドリアン・ニューウェイ氏がアストン マーティンへの移籍を決めた。本腰を入れるのは2026年型マシンの開発だ。

レッドブルからアストンへ 移籍の理由は

英国のアストン マーティンF1は、業界随一の設計エンジニアであるエイドリアン・ニューウェイ氏をマネージング・テクニカル・パートナー(managing technical partner)に任命した。2025年3月2日に着任する。

65歳のニューウェイ氏がこれまで手掛けてきたF1マシンは、3つのチームで200以上のグランプリ勝利、13のドライバーズチャンピオン、12のコンストラクターズチャンピオンを獲得している。

AUTOCARの取材に応じるエイドリアン・ニューウェイ氏。インタビュー音声はポッドキャストで配信中。
AUTOCARの取材に応じるエイドリアン・ニューウェイ氏。インタビュー音声はポッドキャストで配信中。    AUTOCAR

そのうち100回以上の優勝、ドライバーズタイトル7回、コンストラクターズタイトル6回は、2005年にレッドブル・レーシングに移籍してからの功績だ。

ニューウェイ氏自身を含め、多くの観客がレッドブルでキャリアを全うするものと考えていた。しかし、今年5月にチーム離脱が正式に発表され、すでに半ばガーデニング休暇(退任時に与えられる有給の長期休暇)に入っている。

AUTOCARのインタビューに応じたニューウェイ氏は、「レッドブルを辞めるという難しい決断を下したのには複数の理由がある」と語った。

「数年前に聞かれたら、『いや、残りのキャリアはレッドブルで過ごす』と答えていたでしょう。しかし、さまざまな理由から、F1における意欲を少し失っているように感じ始めたのです」

レッドブルのF1事業から身を引くことを発表して以来、ニューウェイ氏は兄弟会社のレッドブル・アドバンスド・テクノロジーズで新型ハイパーカーのRB17の開発に時間を費やしている。その傍ら、F1復帰へのさまざまな申し出に対応してきた。

アストン マーティンの共同所有者であり会長のローレンス・ストロール氏は、天才とも呼ばれるエンジニアを迎えるにあたって「彼の仕事ぶりは世界一」と評した。ニューウェイ氏は、移籍を決める上でストロール会長から大きな影響を受けたと認めている。

一部メディアでは天文学的な額とも噂される報酬に加え、アストン マーティンF1チームの株式も取得することになる。これについては「今までになかったもので、それによって自分の見通しがどう変わるか楽しみです」と語った。

レッドブルを「成熟したチーム」、昨年のコンストラクターズ選手権で5位に終わったアストン マーティンを「まだ少し先」と表現したニューウェイ氏は、「課題は明確」だが、「ローレンスの情熱とコミットメントは模範的」だとした。

「多くの点で、彼はチームの成功に対するコミットメントにおいて、レッドブルの故オーナー、ディートリッヒ・マテシッツを思い出させます。ローレンスは何事にも熱心で、彼と一緒に仕事ができることをとても楽しみにしています」

2025年シーズンでは、アストン マーティンのパフォーマンス向上をある程度任されることになるが、主な任務は2026年型マシンの開発である。着任の数か月前に、2026年シーズンに向けたF1の新レギュレーションが発表される見込みだ。

ニューウェイ氏はロードカーに強い関心を持っているが、アストン マーティンのロードカー部門と仕事をすることはないだろう。少なくとも当面の間はF1に「フルタイムで唯一の焦点」を当てる構えだ。

レッドブル・アドバンスド・テクノロジーズでは以前、アストン マーティンとハイパーカーのヴァルキリーの開発で協業したことがある。「とても楽しい」プロジェクトだったと振り返るが、「わたし達の希望通りにはなりませんでした……これは決してアストン マーティンを批判するものではありません」とのこと。

F1、ロードカー、その他多くのことに関するニューウェイ氏へのインタビューは、AUTOCARのポッドキャスト(英語音声。YouTubeでも視聴可能:動画タイトル『Adrian Newey exclusive interview: on Aston Martin, Red Bull, and bringing back the V10』)で聴くことができる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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