公道では「上澄み」に過ぎない BMW M2 長期テスト(最終) 8速ATの素晴らしい仕事ぶり

公開 : 2024.09.29 09:45

M謹製の直列6気筒ターボを積んだ稀代のコンパクト・クーペ、M2 ひと回り拡大した正統派モデル あえて売れ筋のATを選択 普段使いの印象は? 英国編集部が長期テストで完成度を確認

積算1万3315km 公道での体験は上澄みに過ぎない

英国でも、インフレや物価高騰の話題に尽きない昨今。BMW M2とも関係が深い事象に思える。現在のBMW Mモデルでは最小サイズながら、先代のF87型から遥かに大きく、高額になっているからだ。

それでも、M2の印象は最後まで素晴らしかった。むしろ、乗るほど良くなっていった。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

第一印象は、信じられないほど有能でもM2らしくないほどシリアスだな、というもの。小さく身軽なスポーツクーペ、という感じは薄かった。実際、最高出力は460psもあり、先代の4シリーズとボディの寸法は大きく違わない。

だが、現代の高性能モデルの水準で考えれば、G87型は充分に小柄といえる側にある。サイズへ慣れるほど、M2を心の底から味わえるようになっていった。直列6気筒ツインターボの壮大なパワーは、病みつきになる。毎回、運転するのを楽しみにしていた。

確かに公道で発揮できるのは、殆どの状況で秘めたパフォーマンスの上澄みに過ぎない。460psを完全に引き出すのにも、ドリフトモードで悪ふざけするのも、サーキットへ向かわなければ難しい。また、スポーツプラス・モードの乗り心地は、英国では硬すぎる。

それを知っていても、M2は日常的な環境で面白い。路面とのダイレクトさと、レスポンシブでシンフォニックなエンジンに酔いしれられる。ダブルスポーク・アルミホイールのガリキズには、常に意識する必要があるとはいえ。

素晴らしい仕事を披露する8速AT

長期テストのM2は、近年では希少なMTではなかった。試乗レポートで絶賛されていたことは知っていたから、あえてATを選ぶべきか大いに迷った。

しかし数か月を一緒にした今、この判断が間違いだったとは考えていない。もう一度選択権が与えられたら、再びATを指定するように思う。とにかく、この8速ATは素晴らしい仕事を披露してくれるのだ。

BMW M2 クーペ(英国仕様)
BMW M2 クーペ(英国仕様)

変速は極めて迅速に行われ、タイミングもドンピシャ。ローンチコントロール機能が備わり、有能なトラクション・コントロールと協調し、本来の動力性能を簡単に引き出せる。しかも、渋滞の多いロンドンでも快適だ。

毎日のファミリーカーとして選ぶには、相当の決断が必要ではある。リアシートは実用に耐える広さはあるが、2ドアだから乗降性は良くない。しかし荷室は広く、想像以上の荷物を載せられる。パワートレインの低速でのマナーも、驚くほど上品といえる。

コンフォート・モードなら、乗り心地は充分快適。高速道路でも揺れは完全には収まらず、長距離ドライブに最適とはいい難いが、凹凸による強い入力はなだめてくれる。Mモデルらしくスポーティなインテリアは、高級感があり居心地も良い。

インフォテインメント・システムも優秀。14.9インチのタッチモニターは大きいが、スリムなデザインで圧迫感は小さめ。ロータリーコントローラーが備わり、走行中でもナビゲーションの調整は難しくない。今後も残して欲しい、インターフェイスだと思う。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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