ゴルフ GTIに並ぶ日は来るのか? フォルクスワーゲンID.3 GTXへ試乗 後輪駆動で航続603km

公開 : 2024.10.15 19:05

航続距離は603km ダイレクトな操縦性

駆動用モーターの質感は、非常に洗練されている。サイレントでシームレスな特性を、好ましいと感じる人は多いはず。一方で、エグゾーストノートなどが伴わず、古くからのホットハッチ・ファンは物足りなく感じそうだ。

駆動用バッテリーは79.0kWhのリチウムイオンで、これも新ユニット。航続距離は最大603kmが主張される。急速充電は、DCで最大185kWに対応。残量10%から80%まで、最短26分で回復可能だという。

フォルクスワーゲンID.3 GTX(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.3 GTX(英国仕様)

ID.3 GTXでは、サスペンションのスプリングとダンパーも専用設定。ステアリングとブレーキにも調整が加えられ、スポーティな走りを叶えている。

特にステアリングの反応は正確で、ダイレクト感が強い。直感的で機敏に身をこなし、コーナリングの充足感は高い。

ただし、ホットハッチへ期待するような、フィードバックまでは備わらない。間違いなくオンロードを高速に走れるバッテリーEVだが、運転の魅力度が高いとまではいえないだろう。

タイヤは20インチの215/45。フロントのグリップ力は高く、リア側も安定。カーブからの脱出で強めにアクセルペダルを踏み込んでも、スタビリティ・コントロールが早々に介入することはなかった。

引き締められた足まわりでも、乗り心地の悪化は最小限。傷んだ路面を通過しても、揺れで上半身が揺さぶられることはない。静寂性と相まって、長距離旅行時の疲労感は小さそうだ。

フォルクスワーゲンらしい高い熟成度

バッテリーEVは進化を重ね、航続距離以上の魅力の重要性は増している。ヒョンデアイオニック5 Nで、合成エンジン音を奏でるNアクティブ・サウンド+と、疑似的な変速を楽しめるN e-シフトを採用。ソフトウエアで、運転体験の向上を試みた。

そのような新たな技術は実装されなかった、ID.3 GTX。ゴルフ GTIに並ぶほどの、クルマとの一体感までは創出できていないように思う。通常のID.3を大幅に超えるようなスポーティさを、筆者は感じることができなかった。

フォルクスワーゲンID.3 GTX(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.3 GTX(英国仕様)

とはいえ、これまで以上の速さと直感的な操縦性は獲得した。優れたエネルギー効率に、ゆとりのある車内空間、最新のデジタル技術など、強みは多い。フォルクスワーゲンらしい、高い熟成度を備えることは間違いないだろう。

◯:直感的な操縦性 これまで以上の速さ 広々とした車内空間
△:従来のホットハッチへ並ぶ運転体験は得ていない お高めの価格

フォルクスワーゲンID.3 GTX(英国仕様)のスペック

英国価格:4万6225ポンド(約888万円/パフォーマンス)
全長:4261mm
全幅:1809mm
全高:1562mm
最高速度:180km/h
0-100km/h加速:5.9秒
航続距離:603km
電費:6.6-6.9km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1985kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:79.0kWh
急速充電能力:185kW
最高出力:286ps
最大トルク:55.4kg-m
ギアボックス:1速リダクション(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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