目指すはクルマ開発「ワンストップ型」施設 ホリバMIRAへ潜入 超リアルなシミュレーター

公開 : 2024.09.28 19:05

日本の堀場製作所が所有する、巨大な「MIRA」 ワンストップ型の自動車開発施設を目指す 多大なコストと時間の削減へ貢献 自律運転やセキュリティにも対応 英国編集部が潜入取材

クルマの設計開発に関するサービスを多角展開

恐らく殆どの人は、「自動車産業研究協会(モーター・インダストリー・リサーチ・アソシエーション)」のことをご存知ないだろう。MIRAという4文字も、広く知られたものではない。

AUTOCARの読者なら、自動車のテストコースを思い浮かべる人もいらっしゃるはず。1970年代のローバーが、石畳の道をガタガタと進んだり、フルブレーキを試しているような映像を、一度は目にしたことがおありかも。

ホリバMIRAの施設の様子
ホリバMIRAの施設の様子

ただしそんなイメージは、2024年のホリバMIRAの実態とはズレている。規模の大小を問わず、自動車産業へ関わる世界中の企業の設計開発を支援しようという、現在の姿勢とは合致しない。

MIRAは、戦後に急成長した自動車産業とともに歩んできた。今でも、多くのプロトタイプがテスト走行へ挑む場所で、英国では最も革新的な技術拠点の1つといえる。それ自体に変わりはない。

だが、日本の堀場製作所というオーナーのもとで、ビジネスは大胆に拡大を続けている。衝突試験や排気ガス試験へ、高度に対応するだけではない。クルマ作りに対する、様々なサービスを展開している。

駆動用バッテリーやサイバーセキュリティの試験施設に、運転支援や自律運転システムの実験コース、シミュレーターを軸とした車両開発施設などを、同社は次々に竣工させた。近日中には、独自の自動車製造工場も完成するとか。

そこで英国編集部は、ホリバMIRAへお邪魔させていただいた。場所は、グレートブリテン島中部、コベントリーの北だ。

英国初の自動車シミュレーター

高速道路のA5号線のそばに、いかにも工場といった外観の建物がある。ここでは、フルモーション・シミュレーターが稼働している。

建物内は広く、大型トラック数台は余裕で収まる。シミュレーター・リグ(躯体)には、水平方向の油圧アームが3本と、垂直方向のアームが斜めに9本。すべてが、BMW 1シリーズを半分に切ったようなボディシェルを支えている。

ホリバMIRAのシミュレーター、VIグレード DiM 250へ乗り込む筆者
ホリバMIRAのシミュレーター、VIグレード DiM 250へ乗り込む筆者

スライドするプラットフォームから、その車内へ乗り込む。システムが稼働すると、ボディは僅かに上昇。前方には、視界を取り囲むようにカーブした、巨大なスクリーンが広がる。

アームの動きによって、9軸という複雑な動きが再現される。加減速時のピッチや旋回時のロールとヨーのほか、ボディ自体の上下、横や縦方向など、走行中のクルマへ作用する物理的な力を、仮想的にすべて再現可能だという。

ボディに合わせて、スクリーンの映像も変化する。運転席へ座ると、工場の中にいることは忘れてしまう。高速道路やサーキットを、実際に走っているような感覚になる。

このシミュレーター自体は、専門メーカーのVIグレード社が提供する、DiM 250と呼ばれるシステム。導入実績としては、ここが英国初とのこと。2023年9月から稼働しており、車両開発における初期段階で貢献するそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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