プラス15ps&マイナス10kg マクラーレンGTSへ試乗 飛ばすほど惹き込まれる運転体験

公開 : 2024.09.14 19:05

マクラーレンのエントリー・スーパーカーがアップデート 15psのパワーアップと10kgのダイエット 自然なグリップ感と清々しい敏捷性は不変 更なる変化が欲しい 英編集部が評価

15psのパワーアップと10kgのダイエット

2019年に発売された、マクラーレンGT。ミドシップ・プラットフォームを始めとする多くの技術は、他のモデルと基本的に共通していた。収益性を高め、ユーザー層を拡大するという重要な狙いが、まだ若かったスーパーカー・ブランドにはあった。

だが、期待通りの売れ行きにはないようだ。英国の自動車製造販売協会(SMMT)の情報によれば、現状では720S750Sと、570S600LTアルトゥーラの方が販売数は多いとか。

マクラーレンGTS(英国仕様)
マクラーレンGTS(英国仕様)

そんなモデルを勢い付かせる目的が、今回のアップデートにはある。GTというモデル名は、印象を新しくするためGTSへ変更。パワーアップとダイエット、スタイリングのリフレッシュを受け、2024年の秋を迎えることになる。

といっても、見た目の変化は小さい。マクラーレンのラインナップでは、1番穏やかな雰囲気を漂わせることに変わりはない。全長4683mm、全幅1930mm、全高1213mmと、ワイド&ローのスリムなフォルムを持つスーパーカーだ。

各部を引き締めていたサテンクローム・トリムは、ブラックへ変更。僅かに抑揚を増したエアインテークには、エアロカウルが与えられた。オプションで、試乗車のようにカーボンファイバーで主張させることもできる。

4.0L V8ツインターボエンジンの最高出力は、従来から15ps増し。635psをリアアクスルへ伝える。64.1kg-mの最大トルクに変更はないが、車重は10kg削られている。

ゴルフクラブ・バッグを積めるマクラーレン

現行のマクラーレンでは最高出力が1番低いものの、多くのライバルよりパワーウエイトレシオでは勝ると、同社は主張している。シャシーはカーボン製タブで、サスペンションにはアダプティブダンパーを採用する。

シザーズドアを開き、低いキャビンへ腰を下ろす。GTSの弱みといえるのが、乗降性の悪さだろう。サイドシルが高く、身長が高いと特に足の出し入れが簡単ではない。

マクラーレンGTS(英国仕様)
マクラーレンGTS(英国仕様)

750Sやアルトゥーラより普段使いしやすいモデルとして、GTの時代から位置づけられているはず。ポルシェ911などと同等の日常性を求めるなら、開口部はもう少し広い方が良いと思う。

ただしマクラーレンの説明では、既存のGTユーザーは、この点をさほど気にしていないとか。ゴルフクラブ・バッグが載せられるマクラーレンであることを、多くの人は喜んでいるのだろう。ガラスハッチの下に広がる、大きな荷室をGTSは維持している。

キャビンを観察すると、アルトゥーラなどに備わる、車載機能の操作系とは異なることへ気付く。インフォテインメント用タッチモニターは、7.0インチと小さめ。スマートフォンとのミラーリングには、従来どおり有線でも対応していない。

低い位置には、パワートレインとハンドリングのモードセレクター。ロータリーノブは扱いやすいが、最新の雰囲気というわけではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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