プラス15ps&マイナス10kg マクラーレンGTSへ試乗 飛ばすほど惹き込まれる運転体験

公開 : 2024.09.14 19:05

自然なグリップ感と清々しい敏捷性

マクラーレンは、15ps強化されたものの、運転体験はGTから大きく変化していないと説明する。やや大きめのボディを持つが、自然なグリップ感と、清々しい敏捷性は従来どおりだ。

ステアリングホイールには、不満ない感触が伝達され、印象はポジティブ。乗り心地は、路面からの情報が多く隔離性が高いとはいえないが、充分にしなやか。贅沢な雰囲気を醸し出すとはいえないものの、郊外の道を気持ちよく飛ばせる。

マクラーレンGTS(英国仕様)
マクラーレンGTS(英国仕様)

V8エンジンは、特に中域トルクが豊か。6割程度の深さでアクセルペダルを傾けても、それ以上踏み込んだような力強さがある。吹け上がりも滑らかだ。

一方で、サウンドの聴き応えにはもう少しを望みたい。動力性能とは裏腹に、ライバルのV8エンジンのように、心を震わせる個性があるとはいえないようだ。

トランスミッションは、デュアルクラッチの7速オートマティック。滑らかに変速し、トラック(サーキット)・モードでは、極めて素早く反応してくれる。

全体的な操縦性の印象は素晴らしい。ライバルと比較しても、正確性や安定性は遥かに高い。飛ばすほど、運転へのめり込んでしまう。

反面、快適性や外界との隔離性では及ばない。長距離旅行を終始リラックスして過ごしたいという希望には、充分には応えられなさそうだ。

燃費は、高速道路をクルージングさせた条件で9.6km/L。1度の満タンで走れる距離は、690km前後と考えられる。

更なる変化が与えられても良かった

アップデートに伴い、英国価格は約1万ポンド(約192万円)上昇し、17万9260ポンド(約3442万円)から。オプションが沢山載った試乗車は、約20万ポンド(約3840万円)だった。

これは、素の状態のアルトゥーラに並ぶ金額。ポルシェ911 ターボSやアストン マーティンヴァンテージメルセデスAMG GTなど訴求力ある競合も、同等以下の金額で狙えることが悩ましい。

マクラーレンGTS(英国仕様)
マクラーレンGTS(英国仕様)

しなやかなグランドツアラーとして、特有の魅力を漂わせるGTS。高次元のパフォーマンスだけでなく、優れた操縦性や実用性など、多くの強みを備えることは間違いない。ただし、GTSという新しい名前を得たほどの進化は、獲得していないといえる。

マクラーレンのミドシップスーパーカーらしいが、GTから大幅に使い勝手が良くなったわけではない。プラグイン・ハイブリッドのアルトゥーラが宿す、二面的な個性へ一層の魅力を感じたとしても、筆者は納得できる。

同社3番目という販売順位を繰り上げるなら、更なる変化が与えられても良かった。インテリアやデジタル技術には、その余地が少なからずあったと思う。

◯:マクラーレンらしい機敏な動的特性 抑えられた価格上昇 ポルシェボクスターに並ぶ荷室容量
△:ライバルの方が利便性では上 グランドツアラーとして一層の洗練性が欲しい インテリアやデジタル技術はアップデートが必要

マクラーレンGTS(英国仕様)のスペック

英国価格:17万9260ポンド(約3442万円)
全長:4683mm
全幅:1930mm
全高:1213mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:8.4km/L
CO2排出量:270g/km
車両重量:1520kg
パワートレイン:V型8気筒3994cc ツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:635ps/7500rpm
最大トルク:64.1kg-m/5500-6500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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