【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

公開 : 2024.09.21 20:25

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

美しいルックスとすばらしいV8を備えた先代グラントゥーリズモは、2007年から2019年まで現役を張った。さすがに排ガス規制が強化される中で自然吸気V8は生き残れなかったが、新型のデザインは先代の進化形であることが明白。かなりのロングノーズで、シルエットは流麗だ。

長いクラムシェルボンネットは、視覚的な効果も狙いのうちだ。表面積が3平方mもあるこのパネルを、マセラティはコファンゴと名付けた。イタリア語のコファーノ(ボンネット)とパラファンゴ(フェンダー)を合成した造語だ。

エンジンは完全なフロントミドシップで、エンジンルームは一般的なフロントエンジンGTより混み合っている。この配置でも、前後重量配分はやや前寄りの52:48だ。
エンジンは完全なフロントミドシップで、エンジンルームは一般的なフロントエンジンGTより混み合っている。この配置でも、前後重量配分はやや前寄りの52:48だ。    JOHN BRADSHAW

また、これはメカニカルレイアウトの結果でもある。グラントゥーリズモも、ソフトトップ版のグランカブリオも、用いるプラットフォームは完全新設計で、先代やSUVのグレカーレとはまったくの無関係とされるが、基本設計はアルファ・ロメオ・ステルヴィオがルーツだ。2017年に開発がスタートし、ガソリンエンジンとフル電動パワートレイン、両方への対応が図られた。

先代グラントゥーリズモと同じく、エンジンはフロントアクスルより後方に搭載する。しかしながら、最新のパワフルなGTの例に漏れず、四輪駆動を採用している。エンジンを後方へ寄せたため、フロントデフはエンジンの下ではなく前に配置し、ボンネットを低くすることが可能になった。電動版は、クラシックなデザインとドライビングフィールを変えないよう、バッテリーと3つのモーターをICEパワートレインと同じ位置に積んでいる。

MC20やグレカーレにも搭載されるネットゥーノこと3.0LツインターボV6は、珍しいプレチャンバー燃焼システムを採用。グラントゥーリズモのそれは、2992ccのウェットサンプ版で、折りたたみ式タペットを介して右側シリンダーを休止させることができる。2仕様のチューニングが用意され、490psのモデナと550psのトロフェオを設定。今回のテスト車は後者だ。

このパワーを受け止め、また快適性を維持するため、全車エアサスペンションとアダプティブダンパーを装備。リアデフはLSDで、モデナは機械式、トロフェオは電子制御式となる。サスペンションと電子制御LSD、スタビリティコントロールなどはヴィークルドメインコントロールモジュールと呼ばれるシステムが統合制御し、処理速度を高めている。この頭脳は、マセラティの自社開発品だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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