【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

公開 : 2024.09.21 20:25

内装 ★★★★★★★☆☆☆

グラントゥーリズモが、クラスベストのハンドリングを誇るGT、を目指したことこれまで一度もはない。2008年に先代とポルシェ911を比較したときも、今年になって新型をアストン・マーティンDB12フェラーリ・ローマと対決させたときもそうだった。しかし、グラントゥーリズモにはすばらしい二面性が備わっている。

ライバルたちに比べて全長がかなり長いため、キャビンは広い。VIPを後席に乗せるショーファーカーとまではいかないが、このクラスでフルサイズに近いリアシートを持つクルマはほかにない。新型のメルセデスAMG GTは、リアハッチと後席フォールドを備えるので、荷室はもう少し大きく、実用性も高いが、後席の居住性ではだいぶ劣る。

質感が物足りない部分も目につくが、おおむねよくできている。時計はGメーターにもなるディスプレイだが、アナログ風のチクタク音も再現している。
質感が物足りない部分も目につくが、おおむねよくできている。時計はGメーターにもなるディスプレイだが、アナログ風のチクタク音も再現している。    JOHN BRADSHAW

前席が決定的に長短併せ持つのは、AMG GTに似ている。高価格に見合うと思える要素はもちろんある。ソフトなレザーや、レーザー加工された金属のスピーカーグリル、フェラーリ風の金属製シフトパドルなど。カーボントリムはマセラティには珍しく、粗い織り目の無塗装仕上げだ。

いっぽうで、2面ディスプレイはグロスブラックの大きなプラスティックの塊にはめ込まれ、シフトボタンもひどくプラスティッキー。ツイーターのハウジングは、いかにも頼りなさげだ。ダッシュボードに共通点の多いグレカーレでも言及したが、画面やボタンごとに異なるフォントには、全体的に見るとやや乱雑な印象を受ける。

ありがたいことに、使いやすさはかなりよく考えられている。イタリアンGTとしては、驚くほど収納スペースが多い。ドアポケットは小さいが、ワイヤレス充電器は備わり、センターコンソールの小物入れは大きなものがふたつ用意されている。

ユーザーインターフェイスはかなりディスプレイに依存したものだが、2画面あるので表示スペースは十分にあり、重要な機能へ常にアクセスできる。

すべてが予想通りの場所にレイアウトされているわけではなく、たとえば画面の照度調整がアンビエントのメニューに組み込まれていたりする。それでも、慣れるのにさほど時間はかからないだろう。

メイン画面は、AndroidベースのUコネクトシステムを使用する。フィアットアルファ・ロメオジープでも広く使われるマルチメディアシステムだ。高級GTとなれば、多少なりともビスポーク仕様となっていることを期待したいだろうが、これほど動作や機能がよければ、ケチをつけるのは無粋に思えてくる。

メニューはロジカルで、ホーム画面はカスタマイズが可能。ワイヤレス対応のApple CarPlayとAndroid Autoの統合もうまくできている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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