【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

公開 : 2024.09.21 20:25

走り ★★★★★★★☆☆☆

先代の自然吸気V8が恋しくなるだろうが、3.0LのネットゥーノV6は十分その代わりを務めてくれる。

純粋なスピードについては、少し前にテストしたメルセデスAMG GT 63に後れを取るが、それもほんのわずかだ。いずれにせよ、これほどの性能のクルマを、英国の公道上で全開にできる機会はめったにない。

先代より2気筒減ったが、ターボ化で十分な動力性能を得ている。ATのギア比設定もうまい。ブレーキは、もう少し強化してほしい。
先代より2気筒減ったが、ターボ化で十分な動力性能を得ている。ATのギア比設定もうまい。ブレーキは、もう少し強化してほしい。    JOHN BRADSHAW

ほぼすべての面で、これは本当に速いクルマだ。ややラグがあるデリバリーや、重なりのある本当のエンジン音が、そこにリアルなキャラクターを与えている。低回転では吸気が高まるにつれ唸りをあげ、高回転では血統のよさを感じさせる金属音が増していく。そのサウンドには常に、粗くてざらついたテクスチャーがある。

念入りに設定された8段のギアは、公道上で全回転数を使うことを可能にする。下の4段はクロスレシオで、実際のレブリミットである7200rpmではなく、メーターに表示されたレッドゾーンの6500rpmでシフトアップすると、制限速度へ達する前に3速に入る。

イタリアでのローンチイベントでは、ヘアピンを抜ける際には2速ではややギア比が高く、低回転での元気のなさを避けようとすると1速へ落とす必要があった。ファイナルはもっとショートでも悪くないはずで、当然ながら低回転でのターボのレスポンスが改善されるだろう。

ギアボックスそのものはおなじみのZF製8速ATで、最適な選択といえる。自動変速モードのシフトはスムースで、変速ポイントは賢明。パドル操作に対する反応もクイックだ。コルサモードでは、フルスロットルでのシフトアップでやや不要なジャークが出るものの、ひどく気になるほどではない。

このクルマの有り余るパフォーマンスを考えると、ブレーキは過不足ない程度だ。ペダルフィールは良好で、ドライ路面での平均制動距離が113km/hで44.5mというのも上々。それでも、同じ条件ならAMG GTに負ける。

しかし、加速テストの際に200km/h以上から80km/hまでの減速を何度か行った後で、ブレーキのオーバーヒート警告が出たのは気になる。英国でこんなハードにブレーキングする機会はまずないが、ドイツのアウトバーンではあり得ない話ではない。113km/hからのブレーキテストでは、この問題は出なかった。ただし、70.1mというウェットでの制動距離は納得がいかない。2019年に計測したポルシェ911カレラは、58.2mだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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