【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる

公開 : 2024.09.21 20:25

操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆

GTやグランツーリスモというのは、じつに柔軟性のあるコンセプトだ。実質的に同じ車名の高額な4シータークーペでありながら、マセラティ・グラントゥーリズモメルセデスAMG GTのキャラクターはまったく違う。AMGはスポーティさを強調するが、マセラティはもっとラグジュアリーさを重視している。

このクラスでエアサスペンションを使っているのは独特で、AMG、あるいはBMW8シリーズよりはるかにリラックスした走りを狙ったチューニング。乗り心地は波が長く、スポーティさを追求したクルマにありがちなピリピリした感じがない。ロードノイズのレベルもかなり抑えられている。

エアスプリングを採用した足回りは、特別スポーティなセッティングではない。それでも、ドライバーズカーと呼ぶにふさわしい元気さはあり、モードによっては後輪駆動的な挙動も見せる。
エアスプリングを採用した足回りは、特別スポーティなセッティングではない。それでも、ドライバーズカーと呼ぶにふさわしい元気さはあり、モードによっては後輪駆動的な挙動も見せる。    JOHN BRADSHAW

とはいえマセラティのエアサスペンションは、ポルシェパナメーラのそれに比べれば洗練が足りない。ポルシェのアクティブシステムを別にしても、ホイールコントロールは同等に達していない。結果、路面不整での乗り心地は硬めだ。

全体的に、快適なシートとドライビングポジション、比較的低いノイズとゆったりした乗り心地は、グラントゥーリズモをライバルたちより魅力的な長距離移動マシンにしている。

そうはいっても、メルセデスのSクラス・クーペのように純粋な高級クーペというわけではない。そうはいっても、AMG GTのようなボディコントロールや電光石火のレスポンスは持ち合わせていないし、もちろんフェラーリローマとも違うことは言うに及ばない。それでも、グラントゥーリズモは魅力的なドライバーズカーたりうる活気がある。

ハイライトはステアリングだ。エンジニアたちはかなり穏やかなギア比を選び、重すぎる設定を避けた。非常に直観的で、細いリム越しにグリップレベルを教えるフィードバックは敏感だ。

4WD化は、このクルマをトラクション番長にするものではなかった。コルサモードを選ぶと、後輪駆動的に楽しめるバランスがあり、タイトコーナーでは多少のオーバーステアも出る。同時に、GTモードでは期待どおりに安全で地味な走りを見せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

関連テーマ

コメント

おすすめ記事

 
×