「開発費」は楽しさに比例しない ポルシェ911 ノーブルM12 TVRタスカン 6気筒スポーツ比較(1)

公開 : 2024.10.05 17:45

21世紀への変わり目に誕生した3台の6気筒スポーツ グループCマシンを彷彿とさせるM12 ドラマチックなボディのタスカン 手強い道を克服する能力で秀でた911 英編集部が比較で魅力を探る

グループCマシンを彷彿とさせるM12

少量生産のスポーツカー・メーカーは、往々にして資金不足の状態にある。最高のドライビング体験を生み出すことと、年度末の収支報告との狭間で苦悶しているのが常だ。加えて、リー・ノーブル氏は中途半端なことを許さない。

英国のスポーツカー・メーカー、ノーブルは、M12 GTOシリーズの大成功で出資者の期待に応えてみせた。彼がミドシップ・スポーツカーの草案を温め始めたのは、1980年代初頭。まだ、アルティマ・スポーツ社の時代だった。

手前からノーブルM12 GTO-3Rと、TVRタスカン S、ポルシェ911 カレラ4
手前からノーブルM12 GTO-3Rと、TVRタスカン S、ポルシェ911 カレラ4

ノーブル・オートモーティブ社を創業したのは、1998年。「広告を出稿する予算はありませんでした。マスコミに頼る以外、手段はありませんでしたね」。とリーが25年ほど前を振り返る。

M12の前身となる、M10 ロードスターへ試乗したAUTOCARは、その仕上がりを絶賛した。「これまで運転してきたミドシップの英国製2シーターの中で、最も完成度が高く、エキサイティングな1台です」。と伝え、市場の関心向上へひと役買った。

2000年に発表されたのが、スタイリングとパフォーマンスを磨いたM12 GTO。シャシーはM10の派生版で、ロールケージが一体になったスチール製スペースフレームに、接着剤とリベットで合金製パネルが組まれていた。

それを覆う大胆なボディは、グラスファイバー製。ル・マン24時間レースを走る、グループCマシンを彷彿とさせた。

サスペンションはダブルウイッシュボーン式で、ダンパーはコニ社製の車高調整式。入念なセットアップにより、優れた姿勢制御と操縦性、路面への追従性を叶えていた。

リアにダース・ベイダーがいる

パワーユニットも、当然アップデート。フォード・デュラテックと呼ばれるオールアルミ製の2.5L V型6気筒ユニットは先進的な設計で、各国での認証も済んでおり、賢明なチョイスになった。

これに、ギャレット社製のT25型ターボチャージャーを2基ドッキング。インタークーラーも挟み、ノーブルは314psの最高出力を引き出した。その結果、0-161km/h加速時間は、当時の同クラスのフェラーリに並んでいる。

ノーブルM12 GTO-3R(2000〜2005年/英国仕様)
ノーブルM12 GTO-3R(2000〜2005年/英国仕様)

ターボの悲鳴も、特徴の1つになった。BBCの人気番組、トップギアで試乗したジェレミー・クラークソン氏は、これを聞いてリアにダース・ベイダーがいる、とジョークを飛ばしている。

M12は、製造工程の殆どが南アフリカのハイテク・オートモーティブ社で済まされた。ノーブルの英国バーウェル工場では、パワートレインが組み付けられる程度だったが、4万4950ポンドという現実的な英国価格が、力強く販売を牽引した。

今回ご登場願ったのは、2003年に追加されたM12 GTO-3R。約5000ポンドの価格上昇と引き換えに、最高出力は357psへ強化され、クワイフ社製トルクベクタリング・デフに6速MTが組まれている。同時期のTVRタスカンやポルシェ911より、お手頃だった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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