純粋ドライビングマシンを選ぶ! ポルシェ911 ノーブルM12 TVRタスカン 6気筒スポーツ比較(2)

公開 : 2024.10.05 17:46

フォード・モンデオと共有するV6エンジン

アント・デイ氏が所有するシルバーのM12 GTO-3Rは、今日の3台では1番パワフル。標準では357psだが、ロムチューンで426psへ強化されている。ノーブルの場合、オーナーが独自のチューニングを楽しんでいる例は珍しくない。

ただし、シャシーはオリジナルらしい。20%の強化を受け止められるのか、若干の不安がよぎる。

ノーブルM12 GTO-3R(2000〜2005年/英国仕様)
ノーブルM12 GTO-3R(2000〜2005年/英国仕様)

M12 GTO-3Rは、正直乗り降りしにくい。頭から身体を押し込み、背中を丸めてお尻を座面に降ろし、足を引き込む。レザー張りのバケットシートは心地良い。

ステアリングホイールは、ゲームのコントローラーに似ているかも。可動域が広く、快適な運転姿勢を探せる。フォード由来のスイッチ類が多用され、インテリアは、良くいえば簡素な機能性重視のデザインだ。

ダッシュボードは硬質なプラスティック製で、4枚のメーターが突き出ている。中央側には、独立したブースト計。シンプルだが、人間工学的には悪くない。

キーを捻って、同時期のフォード・モンデオと共有するV6エンジンを始動させる。エグゾーストノートは、996型911へ近い。

フォード由来の6速MTのシフトレバーは、若干ソリッド感が足りないものの、正確にゲートへ収まる。ステアリングホイールは軽く回せ、負担は少ない。路面変化で進路は乱れがちだが、前方視界は広く安心感がある。

乗り心地は、996型とタスカン Sの中間。ゆったり走っていても苦ではない。

純粋なドライビングマシンとして際立つ

しかし、カーブが連続する区間へ飛び込むと、一転して積極的。後継モデルのノーブルM400へ迫るダッシュを披露し、特に中間加速は鋭い。3000rpmを過ぎ、ブースト圧の上昇とともに本領が表出していく。

5000rpmへ達する頃には、速度上昇に圧倒されている。公道では、それ以上回そうという気持ちが薄れるほど。直線的な速さでは、タスカン Sも負けていない。とはいえ、ノーブルのシャシーは別次元の完成度にある。

手前からノーブルM12 GTO-3Rと、TVRタスカン S、ポルシェ911 カレラ4
手前からノーブルM12 GTO-3Rと、TVRタスカン S、ポルシェ911 カレラ4

登場から20年以上が経過したM12 GTO-3Rだが、軽くない車重とバネ下重量から逃れられない現在のスポーツカーと比較しても、動的能力では引けを取らない。驚異的な姿勢制御とグリップ力、シャシーバランスで、今回の3台では圧倒的な勝者だ。

ノーブルは、快く受け入れられるドライバーが限られるかもしれない。スタイリングやインテリアの訴求力ではタスカン Sへ劣ると思うし、実用性と信頼性では、996型911には敵わない。どちらもスポーツカーとして、不満なく楽しい。

それでも、純粋なドライビングマシンとして比べたら? 際立つのはM12 GTO-3Rだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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