【新型スペーシア・ギアの肝】 もっと無骨かわいく! 開発担当&デザイナーに訊く

公開 : 2024.09.21 07:05

スズキは昨年11月に発売した新型スペーシア・スペーシア・カスタムの派生モデル、スペーシア・ギアを発売。先代が好評であったことから、引き続きの投入です。内田俊一が、開発責任者やデザイナーにその狙いや特徴について訊きました。

ポジショニングは"モノ"より"コト"

先代(2代目)スズキスペーシアギアは、スペーシアの販売途中でのデビュー。その理由について開発責任者の鈴木猛介さんは、このように語る。

「初代が競合車に大きく負けている中で、先代の企画当初は標準とカスタムの2種類しかありませんでした。これを変わらず出したところで全然勝負にならないという大きな判断がありまして、さらに台数を伸ばすべく他がやっていないところに出そうと考えた結果、後から追加したという経緯です」

左からスペーシアの3バリエーション、カスタム、ギア、標準モデル。
左からスペーシアの3バリエーション、カスタム、ギア、標準モデル。    内田俊一

そのポジショニングは”モノ”より”コト”だという。

「標準のスペーシアを真ん中にした時に、カスタムはモノや上質さという価値を狙っています。そしてギアはライフスタイルへの価値付け、つまりモノよりコトに近い使われ方を意識しています。スペーシアは日常使いが基本であるのに対し、ライフスタイルがアウトドア寄りの方や、そうしたライフスタイルを求めている方たちに向けました」

さらに新型はデザインが肝だという鈴木さん。「先代は、ユーザーから自然と”無骨かわいい”というキーワードが出て来たので、デザイナーにはもっと無骨かわいくして欲しいというお題を渡しました」。

デザイナーへのお題の出し方

しかし派生車であることから、制限も多くあったことだろう。

「こういうクルマは作り手が楽しめなければ楽しいクルマにはならないでしょう。そこで、”無骨かわいい”というキーワード以外は、比較的フリーとしました。デザイナーからは(金額を考慮せず)、様々な提案がありました」

スズキ・スペーシアギアの開発責任者を務める鈴木猛介さん。
スズキ・スペーシアギアの開発責任者を務める鈴木猛介さん。    内田俊一

例えばフロントとリアバンパー下部にあるスキッドプレートは、部品点数が増えるなどで通常認められないことが多いそうだ。またサイドに”GEAR”というエンブレムも配されたのも同様だ。

鈴木さんは、「成立させるために、企画側が頑張ってコストをどうするかを考えればいいんです」と語っていたのが印象的だった。因みに変更が認められない箇所は主に鉄板部分だった。

デジタルガジェットをイメージしながら

エクステリアデザインを担当したのは中村賢人さん。

内外のデザインコンセプトは”10マイルアドベンチャー”。軽自動車の平均走行距離の中で、アウトドア気分も味わってもらいたいという意味だ。中村さんはこう解説する。

エクステリアは、デジタルガジェットという造形テーマを設定。
エクステリアは、デジタルガジェットという造形テーマを設定。    内田俊一

「デジタルガジェットという造形テーマを設定して、縦横斜めの多角形のデザインや、スッキリとした面質を意識しました。例えばアクティブなシーンで使うアクションカメラやICレコーダーなどのデザイン要素を取り入れたのがポイントです」

最も変更されたフロントまわりは、「よりタフに頑丈にしたいという企画の狙いもあり、大きいブロックを使い目立つようにしました。結果としてジムニーにも似た、そして丸目からワクワクさせるデザインになりました」とコメント。

同時にバンパー形状の変更で正面から見るとフロント周りをガードしているように見せ、安心感を演出している。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    内田俊一

    日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。長距離試乗も得意であらゆるシーンでの試乗記執筆を心掛けている。クラシックカーの分野も得意で、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員でもある。現在、車検切れのルノー25バカラとルノー10を所有。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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