ほぼ「完全に新しい」 アウディ S e-トロン GTへ試乗 ポルシェ共同開発のアクティブサス獲得

公開 : 2024.09.27 19:05

アウディの電動グランドツアラー、e-トロン GTが大アップデート 30kg軽いモーターと105kWhのバッテリー インテリアはほぼ不変 アクティブサスはポルシェ共同開発 英編集部が評価

ほぼ完全に新しいアップデート後のe-トロン GT

滑らかなアウトバーンを、185km/hで疾走する。アップデートを受けたアウディe-トロン GTは、無敵感がすごい。2021年の発売時から、落ち着いた雰囲気が気に入っていたが、これほどではなかった。

とはいえ、バンパーを除いて、ボディパネルは基本的に変更されていない。アウディの電動フラッグシップらしい、広々とした車内空間も変わらない。ダッシュボードの化粧トリムなど、オプションの選択肢が大幅に増えた程度だ。

アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)
アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)

しかし、そんな見た目に騙されてはいけない。同社の研究開発部門を率いるステファン・ライル氏が「ほぼ完全に新しい」と主張するほどの、改良を受けている。こうして高速移動していると、その言葉に疑う余地はない。不気味なくらい先進的に思える。

3年前の英国価格は、約8万5千ポンドだったが、現在は約11万ポンド(約2112万円)へ上昇した。これを正当化するものの1つが、新しい駆動用バッテリーだ。

ユニット全体で625kgあるものの、従来より9kg軽く、容量は93kWhから12%増しの105kWh。航続距離は601kmが主張される。アップデート前の現実的な距離は390km前後だった。晴れて、「GT」を名乗るモデルとして不足ない持久力を得たといえる。

急速充電も、最大270kWから320kWへ強化され、300kW前後での充電へ長時間対応している。従来のユニットは、理想的に充電できる内部温度が5℃だったらしいが、新ユニットではその範囲が広げられたという。

最短で、10分当たり約280kmぶんの電気を蓄えられる計算になる。理論上では。

30kg軽い新モーター インテリアはほぼ不変

もちろん、高速にもなっている。今回試乗したベーシックなS e-トロン GTでも、ツインモーターで680ps。現行のアウディRS6 アバントより、速いと感じるほど。RS e-トロン GTは857psで、RSパフォーマンス e-トロン GTでは925psへ上昇する。

凄まじい馬力だが、バッテリーEVの場合、パワーアップはさほど難しくないようだ。リアアクスルの2速ATに変更はなし。239psのフロントモーターも、基本的にはキャリーオーバーとのこと。

アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)
アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)

リアモーターは新ユニット。長さが192mm、直径は230mmの円柱形で、従来品より30kg軽いという。

ドアを開くと、アップデート前と殆ど変わらないインテリアが現れる。緩やかにカーブしたダッシュボードや、高めのウインドウラインはそのまま。スーパーサルーンとスポーツクーペを足して割ったような雰囲気がある。

頭上には、パノラミック・ガラスルーフ。液晶ポリマーガラスで、透明度をボタン1つで変えられる。サイドサポートのしっかりしたシートは調整域が大きく、座り心地が良い。前方視界も広い。

アウディらしいデザインのステアリングホイールは、リムの上下がフラットに。技術的に兄弟関係にある、ポルシェタイカンより直径は僅かに小さい。

スポーク部分には、新しいタッチパネル。複数の機能へ対応するが、従来の、実際に押せるボタンの方が扱いやすいと思う。

モニター式のメーターパネル、バーチャルコックピットと、ダッシュボード中央のタッチモニターのグラフィックは更新。表示内容の変更範囲も広げられた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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