ほぼ「完全に新しい」 アウディ S e-トロン GTへ試乗 ポルシェ共同開発のアクティブサス獲得

公開 : 2024.09.27 19:05

めっぽう速い680ps 新サスペンション獲得

さて、ドイツの公道へ出てみると、先述の通り680psだからめっぽう速い。バッテリーEVらしく、太いトルクが即座に立ち上がる。

トップモデルのRSパフォーマンス e-トロン GTには、より緻密にパワーを分配し、鋭い加速を生むモードも備わるが、その必要性を感じないほど。欲した時に求めれば、不満ない速度上昇を召喚できる。

アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)
アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)

ダイナミック・モードを選択すると、リアアクスルの2速ATがシフトダウンするのがわかる。あえて、メカニカルな感触を与えているのだろう。

ブレーキペダルの印象は、大幅に良くなった。それでいて、回生ブレーキの強さも290kWから約400kWへ強化されている。

こんな動力性能もさることながら、アップデート後のe-トロン GTで最大のトピックが、ポルシェと共同開発されたアクティブ・サスペンション。電動アクチュエータで、ダンパー内のフルードの流れと圧力を変化させるシステムだ。

ドアを開くとボディが70mm持ち上がり、乗降性を良くしてくれる。もし不要なら、オフにもできる。

カーブへ侵入すれば、ボディを僅かに傾けることで、ボディロールを最大2度まで相殺。加減速時は最大25mm、前後方向のピッチを抑えてくれる。全体の上下動、スクワットも同様だという。

運転していると、その仕事ぶりを明確に実感できるわけではない。とはいえ、乗り心地が素晴らしいことは間違いない。波長の長い揺れはしっかり抑え込まれ、不思議なほどフラット。メルセデス・ベンツSクラスより上質かも。

アウディらしい高速バッテリーEV

21インチ・ホイールを履いていても、低速域での制御は見事。歩道の段差を超えても、
揺れを殆ど車内へ伝えない。高速道路では、陥没部分や隆起部分を平然といなす。魔法のような技術だ。

僅かにクイックになったステアリングは、最新サスペンションと相乗し、一層レスポンシブ。同時に安定性も高く、トラクションは濡れたアスファルトでも揺るぎない。

アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)
アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)

ドライバーが意図すれば、テールを外に流すことも可能だが、きっかけを与えない限りタイヤは路面を掴み続ける。トラクション・コントロールを弱めなければ、どんなにアクセルペダルを蹴飛ばしても、グリップを保ち一心不乱に突進し続けるようだ。

ちなみに英国仕様の場合、アクティブ・サスペンションはフォルシュプルング・グレードのみ実装可能。それ以外では、従来のアダプティブ・エアサスペンションの改良版が組まれる。

S e-トロン GTでフォルシュプルングを指定すると、英国価格は13万ポンド(約2496万円)に達する。後輪操舵システムなど、多くの機能も盛り込まれるが。

アップデートを受けた、e-トロン GTの第一印象はかなりイイ。新しいハードウエアが、アウディらしい高速バッテリーEVを完成させたように感じた。

◯:大きなサイズでありながら驚異的な公道での速さ 洗練されたアクティブ・サスペンション 従来以上の航続距離と急速充電能力
△:ロータスエメヤより狭めのリアシート ベース仕様でも11万ポンド(約2112万円)に迫る英国価格

アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)のスペック

英国価格:10万7730ポンド(約2068万円)
全長:4997mm
全幅:1964mm
全高:1389mm
最高速度:244km/h
0-100km/h加速:3.4秒
航続距離:601km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2310kg
パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:105kWh
急速充電能力:320kW
最高出力:680ps
最大トルク:75.3kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前)+2速オートマティック(後/四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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