ソフトトップ・フェラーリの誘惑 ローマ・スパイダー 275 GTS 比較試乗(1) 印象的な60年の進化
公開 : 2024.10.05 09:45 更新 : 2024.10.05 16:47
ローマ・スパイダーの源流にあるフェラーリが、275 GTS 60年前なら衝撃的だった動力性能 芸術と表現したい女性的で魅惑的なボディ コンバーチブル 2台の魅力を英編集部が探る
印象的なほどの進化を遂げたローマ・スパイダー
「うわ、ちょっとまずいな」。フェラーリ275 GTSの1速へシフトレバーを傾け、クラッチペダルを緩めても、びくともしない。アクセルペダルを軽く倒しつつ、思わずこんな言葉がこぼれた。
何度試しても駄目。カッコいいボラーニ社製のワイヤーホイールは、地面へ張り付いたように転がらない。爽快なクルージングを想像していたのに。
275 GTSの所有者へ電話をかけると、すぐに原因は突き止められた。リアブレーキのパッドは温まると膨張し、ディスクをロックしがちらしい。
暫く待つと温度が下がり、時価150万ポンド(約2億8800万円)と見積もられる純白のフェラーリは、無事に発進してくれた。胸をなでおろしたのは、いうまでもない。
駐車場で一緒に待っていた、最新のフェラーリ・ローマ・スパイダーなら、こんなドッキリとは無縁。マラネロ生まれの、フロントエンジン・コンバーチブルの新旧を比較するために、英国編集部が用意した1台だ。
この2台には、丁度60年という時間の隔たりがある。当時の275 GTSがそうだったように、ローマ・スパイダーは、先代に当たるポルトフィーノ Mから印象的なほどの進化を遂げている。スタイリング的にも、技術的にも。
今も現役のポルトフィーノ Mのルーツを遡ると、2008年のカリフォルニアへ辿り着く。リトラクタブル・ハードトップを備えた、コンバーチブルだ。2000年の550 バルケッタ・ピニンファリーナが備えたのは、急な雨に対応するための簡易屋根といえた。
60年前なら衝撃的だった動力性能
ローマ・スパイダーは、ファブリック製のソフトトップを背負う。8層構造で、59km/hまでなら走行中でも開閉可能。13.5秒という早業で、くねくねと巧妙に動き展開される。320km/h近い速度での疾走にも、耐えられる強度があるそうだ。
1969年には、フロントエンジンのコンバーチブル、365 GTS/4「デイトナ」スパイダーが存在していた。280km/hの最高速度をフェラーリは主張したが、そんなスピードでは、閉めたソフトトップは吹き飛ぶのではないだろうか。
AUTOCARでは、既にローマ・スパイダーへ試乗済み。2020年のクーペの後を追うように、2023年から販売が始まっている。英国価格は、21万838ポンド(約4048万円)に設定される。
エンジンはクーペと同じ、3855ccのV型8気筒ツインターボ。8速デュアルクラッチATを介して後輪が駆動される。最高出力は620ps/5750-7500rpmで、0-100km/h加速は3.4秒。こんな動力性能は、60年前なら衝撃的だったに違いない。
先代からひと回り大きくなり、乾燥重量はクーペ比で84kg多い1556kgがうたわれる。ポルトフィーノ Mより、僅かに重い。+2のリアシートを備えることは共通だ。