とある英国人がハマるマイクロカー ウィリアム・サイクロへ試乗 運転には鉄の心臓が必要!

公開 : 2024.10.05 19:05

古いマイクロカーを収集する、1人の英国人女性 47ccスクーター用エンジンが載ったサイクロ 運転には鉄の心臓が必要 グレートブリテン島の周遊計画が進行中 英編集部がのんびり試乗

極小のクルマには評価すべき点が沢山

とある日曜日の、飾らないカーミーティング。空腹を満たすため、朝食に持ってきたベーコン・サンドイッチを口にする。美味しいな、と思った瞬間に、イエローの小さなクルマが横切った。

人だかりができたトライアンフ・スタッグやロータス・エスプリが並んだ一角へ、ヨロヨロと停車。片側のドアが開くと、身を屈めながら女性が降り立った。彼女は、三輪のマイクロカーを軽々と押して、空いていた駐車枠に並べてみせた。

ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)
ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)

好奇心旺盛なクルマ好きは、臆せず近寄っていく。筆者もその1人だ。大きくて高そうなクラシックカーなら、そんな反応にはならないだろう。

BBCの人気番組、トップギアでは、ジェレミー・クラークソン氏がピールP50というマイクロカーに乗り、ビルの中を移動していた。もちろん、笑いを誘う大胆な演出ではあったが、冷静になって考えれば、極小のクルマには評価すべき点が沢山ある。

イエローのウィリアム・サイクロを所有するのは、ルイーズ・バレット氏。彼女も、同様な意見を持っている。1985年に販売された電動のスリーホイラー、シンクレア C5も含めると、4台のマイクロカーを所有しているそうだ。

そのすべてを、深く気に入っているという。「三輪か四輪のクルマでの冒険といえますね」。そう話すパレットの普段の移動手段は、フィアット500らしい。

47ccスクーター用エンジンが載ったサイクロ

彼女がマイクロカーへ興味を抱いたきっかけは、COVID-19で混沌としていた、勤務先の病院だった。救急外来を担当している時に、患者の死を目の当たりにし、自身の意識へ変化があったという。

「人生がはかないものだと、改めて感じました。わたしは、型破りなものへ強く惹かれてきたんですよ。そんな時に偶然、インターネットのイーベイで、ウィリアムを発見したんです」。と当時を振り返る。自宅は、半世紀ほど前の小物で溢れているのだとか。

ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)
ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)

「即決で、2000ポンドで購入。次の朝に、(グレートブリテン島東部の)エセックス州まで引き取りに向かいました」

しかしその日、パレットはロンドンの南、サリー州までサイクロを運転することはできなかった。魅力的な古いマイクロカーだが、往々にしてメカニズムは気まぐれだ。

このサイクロは、スクーター・メーカーのランブレッタ・フランス社が、1966年のパリ・モーターショーで発表した前輪駆動モデル。同社の社長、MH.ウィリアム氏が設計を手掛け、47ccのスクーター用エンジンが搭載されている。

自宅へ連れ帰った彼女は、エンジンをオーバーホール。グラスファイバー製ボディは補修された。それでも、不調はつきものらしい。2022年にブルックランズで開催されたイベントへ向かう途中のことを、パレットは気まずそうに話す。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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