とある英国人がハマるマイクロカー ウィリアム・サイクロへ試乗 運転には鉄の心臓が必要!

公開 : 2024.10.05 19:05

マイクロカーの運転には鉄の心臓が必要

「順調に走っていたんですが、片道2車線の高速道路で故障。路肩へクルマを寄せると、消防車が偶然近づいて来たんですよ。隊員が車線規制してくださって、助かりました」

「その1人から、クルマは諦めた方が良いと忠告されました。もちろん、わたしは拒否して、ロードサービスへ電話。見てもらうと燃料供給のパイプが外れていたのが原因で、すぐに復調したんです」

ルイーズ・バレット氏と、彼女が大切にするマイクロカーたち
ルイーズ・バレット氏と、彼女が大切にするマイクロカーたち

「ところが心配だったのか、ロードサービスと消防車は、ブルックランズまで追走してくださいました。迷惑をかけてしまいましたね・・」

小児看護に携わっているだけあって、不測の事態には耐性があるらしい。サイクロを運転するには、鉄の心臓が必要だと笑う。

「最高速は32km/hがやっと。走っていてクラクションは珍しくないですし、ドライバーの中には、怒鳴ってくる人もいます。でも、殆どの人は好意的に見てくれているようです。ガス欠になっても、足漕ぎペダルが付いているので、自力で動かせるんですよ」

筆者が取材を申し込むと、快く自宅へお招きいただいた。サイクロへ試乗させてくれるという。

小さなガレージには、1974年式のミニ・コムテッセが停まっていた。見た目はサイクロと似たシングルシーターだが、左側はガルウイングドア。パブの駐車場で発見し、500ポンドで買ったそうだ。

もう1台、1970年式のSEABフリッパーもある。これは四輪車で、2023年にコレクターの遺品として、1200ポンドで譲り受けたとのこと。

グレートブリテン島を巡り寄付を集める計画

それでも1番チャーミングに見えるのは、イエローのサイクロ。1976年式で、今でも公道走行できる世界唯一の個体だと、パレットは考えている。最近、2万ポンド(約384万円)で売って欲しいと連絡があったが、彼女は断ったらしい。

小さなステアリングホイールの後ろへ、筆者の身体を押し込む。ノブを引いてボタンを押し、エンジン始動。アクセルペダルを踏むと、ゆったり発進してくれた。

ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)
ウィリアム・サイクロ(1976年式/英国仕様)

加速はのんびりだが、すぐに25km/hくらいでの巡航に落ち着く。エンジンは、想像に反して滑らかで静か。思いのほか、スピードも乗せやすい。

ステアリングホイールの反応は、驚くほどダイレクト。笑ってしまうほど、クルクルと小回りが利く。ところが、調子に乗って走っていると、速度抑止用のスピードバンプで横転しそうになった。

「そのことを、説明し忘れていましたね」。サイクロから降りて報告したら、マイクロカーを愛するパレットが笑顔で教えてくれた。とはいえ、運転はとても楽しい。

「週末は、ホームレスの支援団体で活動しているんです。チャリティーとしてグレートブリテン島を巡って、寄付を集めたいと考えています。小さいですが、車中泊しながら」

番外編:バブルカー&マイクロカー博物館

英国には、1950年代のバブルカーや、マイクロカーを専門にコレクションした、小さな博物館「バブルカー・ミュージアム」がある。2階建てで、英国のメーカーだけでなく、フランスとドイツのモデルも展示されている。

実際に乗れる、バブルカーもあるという。英国へ旅行された際に、立ち寄ってみてはいかがだろう。詳細:www.bubblecarmuseum.co.uk

バブルカー・ミュージアムの様子
バブルカー・ミュージアムの様子

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジョン・エバンス

    John Evans

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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