【詳細データテスト】アストン・マーティン・ヴァンテージ 速さと快適性を高次元で両立 魅力的な改良

公開 : 2024.09.28 20:25  更新 : 2024.09.30 01:21

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

2024年型ヴァンテージは、従来型から大幅に変貌したわけではなく、より力強い外観になりながらも、2005年登場のV8ヴァンテージ以来のDNAを持ち続けている。20年近いギャップがあっても、同じ系列のクルマだとわかるはずだ。

低く構えたリア周りや短いリアオーバーハング、均整の取れたノーズなどは特徴的だが、この3代目ヴァンテージでは、それらの表現がこれまで以上にドラマティックだ。グリルも歴代でもっとも存在感があり、21インチホイールはこれまで、ポルシェ911GT3対抗モデルである従来型のF1エディションにしか採用例がない。

AMGから供給される4.0LツインターボV8は、従来型より出力を155psアップ。ボディ補強や冷却系の容量アップなどによる重量増を打ち消すほどの強化だ。
AMGから供給される4.0LツインターボV8は、従来型より出力を155psアップ。ボディ補強や冷却系の容量アップなどによる重量増を打ち消すほどの強化だ。    JACK HARRISON

最新モデルはまた、ボディが従来型より30mmほど拡幅され、全幅1981mmに達した。これは無視できる寸法ではなく、かつてのDB11よりワイドだ。シャシーは、アルミの押し出し材とキャスト材のブレンドで、基本的にDB12と同じアーキテクチャーだが、ホイールベースは短い。2705mmというのは、フェラーリ・ローマよりわずかに長い程度だ。しかし、全長は競合するフェラーリよりかなり短いのが興味深い。これは、GTカーよりスポーツカーであることを優先したことに起因する。

車両重量は、公称値が1670kg、73Lタンクを満たしての実測値が1745kg。先代を計測した際は1720kgで、冷却系の大型化や、サスペンションタワーの強化、前後アンダートレーの設置などを考えれば、増量幅は小さい。しかし、今回のテスト車に装備されていたカーボンセラミックのブレーキディスクは、27kgの軽量化を実現する。そして、2018年にテストした従来型にはなかったアイテムなので、単純計算で新旧の差は52kgということになる。

もっとも、その重量差をほぼ考えなくていいものにするほど、パワーアップしている。ほぼフロントアクスルより後方に収まったAMG由来のV8ツインターボは、3892ccで665psを発生。ちなみに、従来型は510psだった。トン当たりのパワーは398psで、これは格上に当たるDBSスーパーレッジェーラに4ps/t及ばないだけだ。

駆動力は、リアに積まれたZF製8速ATと、それに統合されたクラッチ式の電子制御LSDを経て後輪へ伝達。もしも3ペダル仕様が用意されるなら、LSDは機械式になるだろう。今回のAT車は、従来型よりファイナルを5%ショート化している。

ステアリングは電動アシストで、このアーキテクチャーを採用したほかのモデルと違って、ステアリングコラムとシャシーの接点にNVH減少のためのカップリングが用いられない。ステアリングの精密さを増すためだ。

さらにそれを高めるのが、ねじり剛性の向上だ。コーナリング時の荷重がかかった状態では、29%アップしているという。これは従来型に対する大きな進歩で、そこに組み合わせるのが、力分布の帯域幅が従来比で5倍になったというビルシュタイン製のスカイフックダンパーだ。タイヤはアストンの認証仕様であるミシュラン・パイロットスポーツS5で、フロントが275/35、リアが325/30のZR21。望めば、新型の調整式トラクションコントロールが補佐してくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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