【詳細データテスト】アストン・マーティン・ヴァンテージ 速さと快適性を高次元で両立 魅力的な改良

公開 : 2024.09.28 20:25  更新 : 2024.09.30 01:21

操舵/安定性 ★★★★★★★★★☆

ヴァンテージはトランスアクスルレイアウトにより、完璧に50:50の前後重量配分を実現した。フロントエンジンのパフォーマンスカーとしては珍しい。それは、誰の尺度でも非常に優れているといえるハンドリングの基礎となっている。新型ヴァンテージは、フロントアクスルに自信を持って頼ることができ、テールは比較的簡単に流すことができる。どちらも気分次第だ。

従来モデルにはなかったニュートラルさがあり、改善された構造部の剛性が利益をもたらしているのは明らかだ。従来モデルにあったスロットルでのアジャスト性はそのままに、ときとしてトゲトゲしく、予想できずにブレークする挙動はきわめてわずかに抑えた。自由に操れるクルマになっている。

665psもあるのに、B級道路でも手に負えなくなることはない。ヴェルヴェットの手袋に包まれた鉄の拳といったところだ。
665psもあるのに、B級道路でも手に負えなくなることはない。ヴェルヴェットの手袋に包まれた鉄の拳といったところだ。    JACK HARRISON

そして、楽しく走れるはずだ。フェラーリ・ローマほどターンインは楽ではなく、ポルシェ911ターボほどアキュラシーは高くないが、グリップが効いて直観的な方向変換に関しては、どちらのライバルにも負けないほどなめらかだ。アジリティも不足はない。パワートレインは、ショート化されたファイナルによって元気さが増している。

固定レシオのステアリングは、ギア比が13.1:1から12.8:1へとわずかに変更したが、違いがはっきりわかる。この変更を活用するのに必要なコントロールをすべてもたらすのが、新たなビルシュタインDTXダンパーだ。かなりの荷重移動を、ボディがステアリング入力とシンクロしなくなることはめったにないようなレベルのコントロールで、しなやかに支える。その結果、生まれるのは自信だ。このクルマは速く走りたがり、ドライバーにそれを実現させようとしてくれる。

どの程度が昔ながらのエンジニアリングによるもので、それを6D−IDUと銘打たれた新たなダイナミクスのコントローラーがどの程度支えているのか、気になるところだ。e−デフやトルクベクタリング、ABSやESPは全体に配置されたセンサーや、6軸加速度センサーから常に情報を得ている。何が起きても、ヴァンテージにはパワーをスムースかつ見たところ有機的にパワーを路面へ伝える。

もちろん、思い切り乱暴に走らせれば、ヴァンテージはそれに応えてくれる。しかし、ロードカーとしての安定感と速さのポテンシャルは、これまでのアストンにはなかったものだ。

気になるのは、ステアリング越しのフィードバックだ。もう少し精度が高くてもいいのではないだろうか。また、フェラーリ812スーパーファストのように、ダッシュボード下まで食い込むような位置にエンジンが積まれていたら、ターンインで瞬間的にノーズヘビーからくる慣性を感じさせることがなくなっていたかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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