ヴァノスとSMGの不調にご用心! BMW M3(E36) UK版中古車ガイド(2) エンジン自体は高耐久

公開 : 2024.10.12 17:46

歴代M3で少し目立たない存在といえる2代目 M謹製の直6にヴァノス・システム採用 エンジン単体は高耐久 SMGの修理は高額 運転する楽しさを追求したFR 英編集部が魅力を振り返る

ダブルヴァノスの不調に注意 エンジンは高耐久

スチール製ブロックの堅牢な直列6気筒に、先進的なヴァノス・システムを採用。E36型BMW M3のエンジンは、優れた動力性能と燃費を実現している。エンジンオイルの消費量が多いため、中古車を選ぶ際は、充分な量が入っているか真っ先に確かめたい。

後期型のダブルヴァノス・システムは、エンジンオイルが汚れるとソレノイドに不調をきたす。過去の交換履歴も良く確かめたいところ。

BMW M3 コンバーチブル(E36型/1992〜1999年/英国仕様)
BMW M3 コンバーチブル(E36型/1992〜1999年/英国仕様)

アイドリング時に回転が安定しない場合や、鋭い加速を求めた時に重たい感じがするなら、ソレノイドのピストンシールが駄目になっている可能性がある。機械的な唸りが大きい場合は、ギアの磨耗が考えられる。

8万km毎に、ヴァノスのシールを交換する価値はある。作業はさほど難しくない。必要なら、英国ではMr.ヴァノス社が入念にオーバーホールしてくれる。執筆時の費用は、1595ポンド(約31万円)とのこと。

前期型の、吸気側だけのシングルヴァノスは故障が少ない。定期的な点検整備を怠らない限り、エンジンは24万kmは耐えられるようだ。ただし、バルブクリアランスが大きくなるとパワーは落ちる。

E36型M3は、1990年代のデザインとしては落ち着きがあり、モダンさも漂わせる。低く構えたスタンスが、通常のE36との違いを静かに主張する。もし走りに緩さを感じたら、ステアリングやサスペンション、タイヤなどのリフレッシュを考えたい。

SMGの修理は高額 北米仕様は243psに落ちる

前期型では5速、後期型では6速のマニュアルは、クラッチのフレキホースの詰まりや、マスターシリンダーとスレーブシリンダーの不調に注意したい。クラッチ自体の減りも、年式的には考えられる。

セミ・オートマティックのSMGでは、スポーツ・モードを選択し飛ばしてみて、クラッチの滑りがないか確かめたい。フルードが減ると、ギアが抜けてしまうことがある。

BMW M3 コンバーチブル(E36型/1992〜1999年/英国仕様)
BMW M3 コンバーチブル(E36型/1992〜1999年/英国仕様)

SMGは構造が複雑なため、修理には高額な予算が求められる。内部のポンプや電気系統が不調になると、英国ではMTへ換装されるケースも多い。

サスペンションは、特にリア側のトレーリングアーム・ブッシュと、ダンパーのトップマウントの状態がチェックポイント。ブレーキパイプは錆びやすく、交換作業ではガソリンタンクとマフラーを一式取り外す必要がある。

ちなみに北米仕様は、最高出力と最大トルクが243psと31.0kg-mへ低く設定されている。サスペンションもソフトで、オプションで5速オートマティックが用意された。

加えて、そのウォーターポンプにはプラスティック製のインペラー(水車)が実装され、10万km前後で割れる事が多い。欧州仕様の場合、金属製のインペラーで壊れることはほぼない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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