人生最高のドライブかも! フェラーリ275 GTB/GTS(2) 独立リアサスとトランスアクスルの新世代

公開 : 2024.10.13 17:46

早々に次世代へ交代した1960年代の275シリーズ 独立懸架式リアサスとトランスアクスル採用 250 GTOへ通じるスタイリング 技術的ブレークスルー・モデルを、英編集部が振り返る

ベルリネッタと共通点がほぼないGTSのボディ

フェラーリ275 GTBを相応のペースで走らせるには、275 GTB/4以上の労力は必要ながら、特別なアルミ製ボディは音響が良い。クラッチペダルは、1960年代の高性能モデルとしては重すぎない。後方へリンクが伸びるシフトレバーは、動きが渋い。

この個体の車重は、通常の275 GTBより117kgも軽く、今回の3台では身のこなしが1番機敏。ドーナツのように膨らんだミシュランXWXタイヤが、優しい乗り心地を生み出す。ダンパーは最近新調されたらしく、高速域での姿勢制御にも締まりがある。

フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)
フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)

カーブへ突っ込むとアンダーステア傾向だが、パワーを掛けていくとリアタイヤが押し出し、ニュートラルに転じる。ブレーキは強力に効き、漸進的。ペダルを深く踏み込む必要があるとはいえ。

対して、1964年のパリ・モーターショーで発表されたスパイダー、275 GTSの印象はだいぶ異なる。250 GTカリフォルニアの後継モデルに当たるが、そもそもクーペのベルリネッタとボディ上の共通点はほぼない。

デザインを担当したのは、ピニンファリーナ社。だが、GTBのボディはカロッツエリアのスカリエッティ社が製造を請け負ったのに対し、GTSはピニンファリーナ自ら提供している。

ムッチリとしたGTBの隣に停めたGTSは、スリムな妖精のよう。ヘッドライトにカバーはなく、フロントガラスは傾斜が少なく、ウエストラインは細身だ。

基本的な運動神経は275 GTBと遜色なし

275 GTSのパワートレインは、ベルリネッタのGTBと共通。ただし、オープンドライブに合わせて、シングルカムのV型12気筒は263psへ馬力が落とされている。

1965年にフェイスリフトを受け、このレッドの1台のように、330GT 2+2へ似たフロントサイドのエアベントを得た。ソフトトップは、トノカバーの下へ綺麗に畳まれる。

フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)
フェラーリ275 GTS (1964〜1966年/欧州仕様)

嬉しいことに、今日のグレートブリテン島は晴天。ドルチェ・ヴィータよろしく、オープンドライブを楽しめる。

主要な操作系の配置はGTBと共通するが、ダッシュボードのデザインが僅かに異なる。スイッチなどが、ドライバーの正面側へ移動している。

今回の275 GTSのマフラーには、充分なタイコが備わらないらしい。クルージングしていても、V12エンジンの心地良いサウンドがドライバーを魅惑的に包み込む。

足まわりはソフトで、カーブではボディが外側へ傾く。加減速時は、フロントノーズが上下する。それでも、275 GTBと比べれば、という程度。基本的な運動神経に、大きな違いはないようだ。

乗り心地はしなやかで、路面の凹凸による粗野な振動は最小限。1960年代のイタリアン・コンバーチブルとしては、優秀といえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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