人生最高のドライブかも! フェラーリ275 GTB/GTS(2) 独立リアサスとトランスアクスルの新世代

公開 : 2024.10.13 17:46

デイトナの実証実験 最高出力は304ps

他方、275 GTBから2年後、1966年に発表されたのが後期の275 GTB/4だ。1968年に365 GTB/4、通称「デイトナ」へ交代するまで、ハイエンドなフェラーリ・ロードカーとしての役目を果たした。

ボディは275 GTBとほぼ同じ。ボンネット中央が一段高くなっているのが、唯一の識別点といえる。だが、その内側へ施されたアップデートは大々的なものだった。

フェラーリ275 GTB/4 (1966〜1968年/欧州仕様)
フェラーリ275 GTB/4 (1966〜1968年/欧州仕様)

既に計画が決まっていた、デイトナの実証実験的な意味が込められていたことは間違いないだろう。最大の違いはエンジン。バンク毎にカムが1本追加され、ユニットのコード番号は226へ改められている。バルブの角度が変更され、急排気効率も改善した。

潤滑はドライサンプ化され、クランクケースはコンパクトに。約8Lのリザーバータンクから、2基のポンプがオイルを供給する。キャブレターは、275 GTBではオプションだった、6連ウェーバーが標準へ格上げされた。

その結果、最高出力は20ps増しの304psを獲得。最大トルクは、25.9kg-mから29.9kg-mへ強化された。ランボルギーニが、スイス・ジュネーブ・モーターショーで350psのミウラを発表しており、パワーアップは必至でもあった。

駆動系も強化され、プロペラシャフトには直径75mmのトルクチューブが追加された。エンジンとトランスアクスルが強固に結ばれ、シャシーへゴムマウントで固定。操縦性を改めている。

ご登場願ったシルバーの275 GTB/4は、GTBからの進化を実感させる。この車両は1967年に製造され、英国で1969年にナンバーを取得。残りの2台と同様に、新車時から1つの家族が所有している。

光が当てられるべき技術的ブレークスルー

オプションの、ボラーニ社製ワイヤーホイールが美しい。レザーシートの座面は高めだが、シートベルト以外、キャビンの様子には275 GTBと大きな違いはない。それでも、V12エンジンは扱いやすい。パワーを絞り出すほど、違いは明確になっていく。

低い回転域から、確実にパワフルでリニア。サウンドは、スチール製ボディのためか、やや抑えめ。エンジンとトランスアクスルが一体になったことで、シフトチェンジは滑らか。スロットルの反応は、今日の3台では1番鮮明だ。

フェラーリ275 GTB/4 (1966〜1968年/欧州仕様)
フェラーリ275 GTB/4 (1966〜1968年/欧州仕様)

ダンパーとスプリングは劣化気味で、交換を控えているとか。路面の荒れたカーブでは、安定性が若干乱れるものの、275 GTBより落ち着きも高い。丸みを帯びた挙動で、動的能力の限界がどの辺りなのか探りたくなってしまう。

オーナーの好みによるポジティブ・キャンバーも、走りの特長に影響しているはず。保存状態は極めて素晴らしく、操る自信を強く与える。オーナーが飛ばす275 GTSの後ろを追走し、これが人生最高のドライブの1つだな、と考えた。

歴代のフェラーリでは短い、4年というモデルライフに終わった275シリーズ。その前後のモデルは更に魅力的だったかもしれないが、技術的なブレークスルーとして、もっと光が当てられるべき存在だと思う。

運転しやすいだけでなく、スタイリングだって決して悪くない。しかも275 GTB/4は、ピニンファリーナ社のレオナルド・フィオラヴァンティ氏のスタイリングをまとう、デイトナの布石となったのだから。

協力:ウィル・ストーン氏

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェイソン・フォン

    Jayson Fong

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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