「感性」で買うスーパーカー マセラティMC20 長期テスト(1) 心を鷲掴みにする優美な容姿
公開 : 2024.10.12 09:45
競合に並ぶ価格 小柄なサイズが機敏さを想起
他方、MC20の英国価格はライバルに並ぶ。長期テスト車両は、オプションを付けて31万735ポンド(約5966万円)に達していた。
カッコいいカーボンファイバー製のボディトリムやエンジンカバーは、ファッション性が強いものといえるが、それを省いても26万ポンド(約4992万円)。ちょっと深呼吸したくなる金額だ。しかし数字に囚われていては、本質を見逃してしまう。
ガルウイングドアを開けば、アップル・カープレイへ対応した、大きな液晶モニターが2面現れる。キャビンの人間工学も素晴らしい。
車内の雰囲気は、1980年代の耐久レーサーのよう。もうすぐ登場するMC20 GT2が、モータースポーツとの結びつきを強化することになるだろう。
ボディサイズは、機敏なジェット戦闘機をイメージさせるように小柄。着座位置は低いが前方視界は広く、路面がお尻の直下を流れていくような感覚を抱ける。若干強固さが足りないように思えるカーボン製シートも、このクラスとしては大柄で、座り心地が良い。
最高出力はライバルに劣っていても、もちろんめっぽう速い。0-100km/hではなく、0-161km/h加速は6.5秒。ツインターボのブーストが効くと、630psではなく、830psあるように感じられる。
心を鷲掴みにする落ち着いたスタイリング
サスペンションは、惚れ惚れするほどしなやか。構えることなく、普段使いできるスーパーカーだ。ソフトということはないものの、ライバルとは異なるアプローチにある。
ある程度の慣れは必要ながら、筆者はすぐに親しくなれた。アルピーヌA110と比べたくなる、特長があるように思う。どちらも清々しいほど流暢で、ドライバーがクルマと意思疎通しやすい。
優雅なスタイリングも、筆者の心を鷲掴みにしている。アグレッシブな488 GTBから、有機的な造形の296 GTBへシフトした、フェラーリのデザインも素晴らしいと思う。だが、MC20は異なる次元にある。落ち着いた中に、他を威圧するような凄みがある。
スリークなスタイリングには、どこかクラシカルな趣が共存している。リアのプロポーションはたおやかで、過剰さはなく、大きくえぐられたサイドも煩雑には感じられない。走り込んだ後に付着した汚れすら、優美さを引き立てる要素に見える。
セカンドオピニオン
MC20は、価格や数字で選ぶスーパーカーではない。筆者も、レーンに同意する。自分の感性で買うスーパーカーだといえる。
街なかでの反応はイイ。多くの人が笑顔でスマートフォンを向けて撮影し、子供は目を輝かせ、ドライバーは道を譲ってくれる。英国人は、派手好きな金持ちとは違う人間が運転するクルマだと、理解しているようだ。 マレー・スカリオン(Murray Scullion)