玩具デザイナーは「世界最高の仕事」 世界的人気のミニカー、ホットウィールに聞く「できるだけ大人にならない」流儀

公開 : 2024.09.30 06:05

世界的な人気を誇るミニカー、ホットウィールのデザイン責任者にインタビュー。「5歳児」の遊び心と創造性を忘れないという矜持や、玩具デザイナーになったきっかけを聞いた。

遊び心あふれるミニカーシリーズ

ミニカーのデザインは、世界最高の仕事? 「間違いなくそうです」とホットウィール(Hot Wheels)のクリエイティブ・ディレクター、クレイグ・カラム氏は言う。

「玩具のデザインの世界では、子供たちに楽しさを提供しているのです。子供たちが何に夢中になるか、何に喜ぶか、そして子供たちの成長につながるものは何かを日々考えています。そうしたことを念頭に置いて仕事ができるのは、本当にやりがいがあります。子供たちの笑顔ほど、この世に薬となるものはないのです」

ホットウィール
ホットウィール

カラム氏は、ホットウィールの誕生のきっかけとなった、遊び心あふれる姿勢を体現している。1968年にエリオット・ハンドラー氏(妻のルース氏はバービー人形を世に送り出した)が発案したホットウィールの最初の商品は、たくましいアメリカンスタイルを体現した青色のシボレーカマロを含む「スイート・シックスティーン」シリーズだった。

現在のラインナップははるかに多様化している。常に約450種類のクルマがあり、その半数近くが同年に新発売されたものだ。メーカー公認の実在モデルと、突飛なホットウィール・オリジナルモデルに分かれており、後者は空飛ぶスーパーカーから車輪付きトイレまで、ありとあらゆるものが販売されている。

トラックの荷台を便器にした車輪付きトイレについて、カラム氏は「ピックアップトラックのプロポーションはそのままですよ」と笑う。

カラム氏は英国ベッドフォードシャー州サンディの出身だ。なぜ、米国カリフォルニア州のマテル本社で玩具のデザインを手がけるようになったのだろうか?

5歳の時に母親のシトロエン2CVで学校に通っていた経験が、クルマに興味を持つようになったきっかけだという。

「たくさんの生徒が2CVを見て大喜びしていたんです。わたしは『わあ、クルマってこんなふうに人々の反応を引き起こすことができるんだ』と思いました」

彼はすぐに、クルマのスケッチを描くようになった。「ヘリポート付きの風変わりな移動式ホテルなどをデザインしていました。母は『あなたは自動車デザイナーになれるわ』と言ってくれました。わたしは、それが自分のやりたいことだと気付いたんです」

コベントリー大学で自動車デザインコースを修了した後、実物大の車両のデザインに取り組んでいたところ、彼のもとにレゴ社(マッチボックスやホットウィールと並んで、幼少期から大好きだった玩具)からのオファーが届いた。

レゴに9年間在籍し、「スピードチャンピオン」シリーズの導入に携わったカラム氏は、2022年末にホットウィールのデザイン・マネージャーとして米国に移った。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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