玩具デザイナーは「世界最高の仕事」 世界的人気のミニカー、ホットウィールに聞く「できるだけ大人にならない」流儀

公開 : 2024.09.30 06:05

実車を「スケールダウン」するだけではない

カラム氏は職務上、新型のスポーツカーやスーパーカーにいち早く触れられるという特権がある。玩具デザインのプロセスには1年~1年半を要し、実車とほぼ同時に玩具が発売されるためだ。

ホットウィールのデザインは、ただ実車を1:64スケールに縮小するだけではない。デザインチームは既定の車輪サイズを基準に、実車の特性を深く掘り下げて、プロポーションをうまく調整しなければならない。もちろん、発売時の価格を念頭に置きながら。

ホットウィール
ホットウィール

「1ドルで1:64スケールの完璧に正確なクルマを作るのはとても難しい」とカルム氏は断言する。

デザイナーたちはAIや3Dプリンターといった最新技術を活用している。特に3Dプリンターは、ダイキャストの試作品を素早く手の平に作り出し、有名なオレンジ色のコースで効率的にテストを行うことができる。

「(テストでは)ループ・ザ・ループができるかどうかを確認します。そうすれば、コース上で問題なく走れるかどうかがわかるんです」

「いつも大変な仕事ばかりというわけではありません。デザイナーは皆、5歳児の持つ喜びと創造性を忘れないように努力しています。わたし達は、できるだけ大人にならないようにしているのです」と彼は微笑む。

しかし、サステナビリティ(持続可能性)への取り組みが強まるにつれ、業界も変化を求められている。

「わたし達にできる最もサステナブルなことは、何世代にもわたって受け継がれるような、永遠に長持ちするおもちゃを作ることだと思います」

「しかし、素材やリサイクル可能性については当然ながら注目しています。当社のパッケージングチームも、その点に重点的に取り組んでいます。マッチボックス(マテル社の別の玩具ブランド)ではすでにパッケージが変更されており、間もなくホットウィールのサプライヤーにも導入されるでしょう」

8月に英国で開催されるイベント、ホットウィール・レジェンドツアーでは、カスタムカーのオーナーたちが自分の愛車をミニカーにしてもらうために競い合う。優勝したカスタムカーは、ホットウィールとして世界中で販売される。

「わたしはこの英国ツアーが大好きです。本当に洗練されたデザインが生まれますから」

カラム氏も趣味でクルマ(実車)をコレクションしており、ホットロッドや17歳で運転免許を取得して以来所有している1970年代のミニなどがある。それらをホットウィールのラインナップにこっそり忍ばせたくなることはないのだろうか?

「自分のクルマを無理やりラインナップに加えるのは、できるだけ長く我慢しようと思っています。いずれにしても、当社のレジェンド・シリーズのデザインはどれも素晴らしい出来です。愛車に対するオーナーたちの熱意をわたしと比較したら、彼らに失礼でしょう」

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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