【詳細データテスト】フォルクスワーゲン・ゴルフGTI マイルドな乗り味に改良 悔やまれるMT不在

公開 : 2024.10.05 20:25  更新 : 2024.10.08 01:12

走り ★★★★★★★★☆☆

バージョン8.5のゴルフGTIは、インテリアにひとつ欠けているものがある。ゴルフボール型のシフトレバーだ。マイナーチェンジしたゴルフの6速MTは、下位グレードには残っているものの、GTIからは消えた。7速DCTが唯一の選択肢だ。

ゴルフVIIIのGTIで、3ペダルを選んだユーザーはわずかだった。かつてスタンダードなGTIはMTのみだったと思うかもしれないが、それもそこまで多いわけではなく、売れないクルマを作っても無駄だと判断されたらしい。それでも、GTIが自動変速機のみとなることは、走りの楽しみがひとつ失われることでもある。

MTがなくなったのは残念だが、パフォーマンスは高い。ブレーキの性能やフィールも優秀だ。
MTがなくなったのは残念だが、パフォーマンスは高い。ブレーキの性能やフィールも優秀だ。    JOHN BRADSHAW

とはいうものの、DSGことフォルクスワーゲンのDCTは、もちろん完成度が非常に高い。取り回し時には多少のがたつきが出るものの、変速は素早くてスムース。シフトパドルを使っても、自動変速モードのままでもだ。ただし、パドルはプラスティッキーで小さい。

EA888型2.0Lガソリンエンジンは、ポロGTIからポルシェ・マカンまで幅広く搭載され、その性能は皆の知るところだ。サウンドがずば抜けていいわけでも、積んだクルマを際立たせるほど個性的なわけでもないが、ほとんどラグのないパフォーマンスを幅広い回転域で発揮し、常に熱さを感じさせる。

2本出しテールパイプからは勇ましい音が聞こえ、もしもハードにエンジンを回せば、オーバーランさせて破裂音を発することもできる。まさにあるべき姿だ。元気なドライビングに応えてくれるが、市街地で不満を感じさせるような特性ではない。

スピーカーからデジタル合成したサウンドを聞かせるシステムの採用はやむを得ないところだが、その程度は走行モードのセッティングで変更できるし、音が嘘くさかったり本来のエンジン音を圧倒してしまったりするものではない。エンジンそのもののキャラクターを変えてしまうのではなく、むしろ強調する感じだ。

本気で走ろうとしたときには、MTの不在が悔やまれるものの、19psのアップとDSGの素早い変速やローンチコントロールが相まって、0−97km/h加速タイムは2021年にテストしたマイナーチェンジ前のMT車を0.9秒凌ぐ。改良前のMT車は発進時のトラクションを確保しあぐねたが、新バージョンは波乱なくスタートし、シフトアップするにつれてコースの終点まで突進していく。

そのペースは、2019年に計測したフォード・フォーカスSTを完全に上回る。フォードはそれ以来、パワートレインの強化を実施していないので、この力関係は現在も変わらないはずだ。また、強力なホンダシビック・タイプRに迫る。スタンダードなGTIでこれだから、まもなく登場するだろうクラブスポーツ仕様への期待は高まる。

ブレーキ性能も強力だ。129km/hからの制動を繰り返しても明確なフェードはなく、ウェットコンディションでの113km/hからの制動距離も、ドライより10m長いだけだ。ペダルフィールは良好で、ふみはじめは少しだけ遊びがあるものの、その先はレスポンスが予測できる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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