森や畑の廃棄物で作る「新燃料」 マツダRX-7で1500km(2) 魅力そのまま環境負荷は減らせる?

公開 : 2024.10.19 17:46

純粋なスポーツカー 平均燃費はざっくり7.4km/L

傷んだアスファルトでも、RX-7はサスペンションがソフトすぎて底突きすることはない。ハードすぎて、グリップが途切れ途切れになることもない。しっかり路面へ追従し、筆者以上の高速でも、ジョン・オ・グローツを目指せそうだ。

とはいえ、理想的に快適なわけではない。舗装が荒れてくると、振動と騒音が絶え間なく続く。前方に見える凹凸を、避けずにはいられない。やむを得ず窪みを通過すると、思わず顔をしかめてしまう。

マツダRX-7(FD型/1992年式/英国仕様)
マツダRX-7(FD型/1992年式/英国仕様)

RX-7の個性は、少し掴みにくい。シートは本皮で、当時は贅沢装備といえたクルーズコントロールも備わり、高速安定性が高くグランドツアラー的といえる。平坦な路面では、特にそう感じられる。ロータリーエンジンのパワーデリバリーも丁寧だ。

他方、上質とは表現しにくい乗り心地は、グランドツアラー的ではないだろう。後輪駆動のマツダ車を担当し続け、最近引退した技術者の山本修弘氏は、可能な限り速く走ることへフォーカスした、純粋なスポーツカーだと主張していた。

RX-7のステアリングホイールを握ったら、軽く汗をかきながら、目前へ伸びる道へ挑戦するべきだろう。ポルシェ968 クラブスポーツが、最も個性が近いように思う。

ウィックから最終目的地まで路面は優れず、RX-7を穏やかに進めた。北海を望む岬へ到着するまでの平均燃費は、ざっくり7.4km/L。手動ポンプでの給油だったから、正確な数字ではないが、普通のガソリンを燃やすのと変わらない効率で走破できた。

自動車の特長を変えずに環境負荷を軽減する

もし石油由来のガソリンなら、ここまでに512kgのCO2を排出していた計算になる。英国のヒースロー空港からキプロス島まで、1人がエコノミークラスの飛行機で移動するのと同じくらいの量といえる。60インチの液晶テレビを、1台作るのとも同等だ。

しかし今回は、サスティン社のバイオ燃料だったから、実質92kg。とはいえ、クラシック・スーパー80の英国価格は、一般的なガソリンの3倍もする。

マツダRX-7(FD型/1992年式/英国仕様)
マツダRX-7(FD型/1992年式/英国仕様)

確かに、クラシックカーの走行時の環境負荷を減らす手段にはなり得る。だがエレクトロモッドと同様に、現実的に受け入れられるのは一部の富裕層に限られるだろう。

だいぶ昔のことだが、ガソリンも高価だった時代はあった。バイオ燃料の量産が進み、普及するほど、安価に転じていく可能性はある。エンジンで走る自動車本来の特長や魅力を変えることなく、環境負荷を大幅に軽減することは不可能ではない。

バッテリーEVの普及で、ガソリンの流通量は減っていくだろう。将来的にもロータリーエンジンのRX-7を運転でき、グレートブリテン島北端までドライブできるなら、サステイン社の取り組みを筆者は強く賛同したいと思った。

協力:マツダUK社、サステイン・フュエルズ社

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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