【解禁時間公開】 フェラーリ・ドーディチ・チリンドリに初試乗! これぞ歴史に残る”12気筒”

公開 : 2024.10.02 07:01  更新 : 2024.10.02 10:05

3、4速のトルクカーブを彫刻するように

今回、ドーディチ・チリンドリの国際試乗会が開催されたのは、なんとルクセンブルク。先に種明かしをすれば、ミシュランと並んで新たに標準タイヤに採用されたグッドイヤーの開発、研究施設があるからで、ルクセンブルクの豊かな自然を堪能しながらの公道試乗と、プロドライバーの同乗も含めたその名も『グッドイヤー・サーキット』の走行を組み合わせたテストドライブとなっていた。

前置きが長くなってきたが、走り出す前に、肝心の12気筒自体の話はしておかねばならない。

F140HD型と呼ばれる自然吸気12気筒は、6496ccで830psもの最高出力を誇る。
F140HD型と呼ばれる自然吸気12気筒は、6496ccで830psもの最高出力を誇る。    フェラーリ

F140HD型と呼ばれるこのV型12気筒は、基本的にこれまでの流れを組む65度のバンク角を持つもの。2002年にエンツォ・フェラーリが搭載したF140B型のスペックが排気量5998cc、最高回転数7800rpm、最高出力660psだったのに対し、ドーディチ・チリンドリは6496cc、9500rpm、830psとなり、数字だけ見ても20年以上でとんでもない進化を果たしたのがわかる。

投入された技術の全てを説明するにはあまりにスペースが足りないが、注目は選択したギアに合わせて最大トルクを変化させるという、自然吸気エンジンでは史上初となるソフトウェアの導入だ。

フェラーリは『3速と4速ギアのトルクカーブを彫刻するように形付けることができた』と自負しており、これと8速化されたDCTの組み合わせが、ドーディチ・チリンドリの性格を決定付けたといっても過言ではない。7→8速化は、V8モデルであるポルトフィーノ→ポルトフィーノMでもあったが、街中の走行マナーが劇的に向上したのを覚えていて、今回も同様の効果がはっきりと体感できた。

きっとクルマが何とかしてくれている

ルクセンブルク郊外の道は、決して広くない。しかも約3時間半となるテストドライブ、その序盤はまさかのウエット路面であった。日本から24時間以上かけてやってきたのに……。

そこを全幅が2176mmもあるフェラーリで走るのは、かなり肝を冷やした。しかしそこで役に立ったのは、車線をはみ出すとまるで轍を踏んでいるかのような身体に伝わる振動とアラート音。フェラーリがADAS……とは時代を感じさせるが、実は見知らぬ国のソロドライブでは結構助けられた。

ルクセンブルクで開催された国際試乗会に参加した編集長ヒライ。
ルクセンブルクで開催された国際試乗会に参加した編集長ヒライ。    フェラーリ

走り始めてすぐに思ったのは、驚くべき乗り心地のよさだ。599で初採用されたマグネティックライドは、まさに熟成極まれりといった感触で、試乗中に足まわりが硬い、不快と思ったことは皆無。プロサングエでもアクティブサスの採用で、スポーツドライブと快適性を高いレベルで両立していたが、フェラーリはここで何かを掴んだのではないかと思えるほど、ひと世代もふた世代も熟成した印象だ。

そんな乗り心地と相まって、V12エンジンと8速DCTの組み合わせによる走行マナーのシームレスさは、感動的なレベルだった。あまりにスムーズすぎて、現実感がないと思ってしまったほど。

ワインディングではウエットということもあり、コーナリングでたまに後輪が滑るような場面もあったが、そのままの印象を書くと、”きっとクルマが何とかしてくれているんだろうな”と感じて、危うさを感じたことはゼロ。ドライバーの技量不足をさりげなくカバーしている印象だ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    平井大介

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事