【解禁時間公開】 フェラーリ・ドーディチ・チリンドリに初試乗! これぞ歴史に残る”12気筒”

公開 : 2024.10.02 07:01  更新 : 2024.10.02 10:05

嗚呼、このためにルクセンブルクまで来たのか

だんだん緊張感も和らいできてクルマに慣れてくると、ドーディチ・チリンドリがとても扱いやすいクルマであることに気が付いた。正確には”そう思わせてくれる”と書くのが正しいだろう。830psのFRが扱いやすいなんて、ちょっと不思議な感覚だが、そんなハイスペックを”使わない”場面のマナーは実に紳士的だ。

後半は路面も乾いてきたので、ステアリングのマネッティーノをスポーツモードに変更。そして、うずうずと湧いてくる、V12サウンドへの渇望……。

1980年代のSF的な要素も取り入れたデザインは、新たな時代を感じさせる。
1980年代のSF的な要素も取り入れたデザインは、新たな時代を感じさせる。    フェラーリ

ということで、周囲の様子を見ながらレッドゾーン手前まで引っ張ってみたところ、あのV12らしいレーシーなサウンドが轟きわたり、嗚呼、このためにルクセンブルクまで来たのかと感動! しかもそこに怖さやハードルはなく、これなら誰でも楽しめそうな気がしたのも、時代を感じさせる部分だ。

無事に3時間半のテストドライブを終え、昼食を挟んで、グッドイヤーの施設を見学。試乗会プログラム最後に設定されたサーキット走行では、もはやクルマの大きさを感じないくらい馴染んで、コースを気持ちよく駆け抜けることができたのだが、同乗走行では、その数段上のレベルでの”扱いやすさ”を体験することになる。……あんなに”踊る”フェラーリに乗ったのは初めてだ。

前日のプレゼン。ドーディチ・チリンドリを紹介する映像の中で、生前のエンツォ・フェラーリがこう話していた。

「12気筒はいつだってフェラーリのオリジナルカーだ。12気筒1500ccが誕生したのは1946年だから、それ以外はすべてオリジナルの派生モデルだと思ってほしい」

ヨーロッパの厳しい排出ガス規制の中で、自然吸気12気筒を作り続けることは、もう難しいかもしれない。だからこそ、派生モデルの集大成として作られた”フェラーリ12気筒”なのかもしれない。いや、人生を楽しむ天才であるイタリア人たちが、今を楽しむ最高の1台として、楽しんで開発したのかもしれない。

いずれにせよ、歴史に残る”12気筒”が誕生したことだけは確かだ。果たしてこれは歴史の終わりか、それとも新たな時代の始まりなのだろうか?

記事に関わった人々

  • 執筆 / 編集

    平井大介

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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