「美味しい部分」は大手メーカーへ ヒーレー・フォード・フィエスタ(2) 1台限りのホットハッチ
公開 : 2024.10.20 17:46
走りの魅力も相当に高い小さなハッチバック
ヒーレー・フォード・フィエスタの走行距離は、1万1000kmほど。「再塗装しましたが、それ以外は当時のままです。わたしが購入してからも、1600kmくらいしか走っていませんよ」。とケネディは説明する。
歴史的な価値もさることながら、小さなハッチバックとして、走りの魅力度も相当に高い。ドナルド・ヒーレー氏がどの程度の販売価格を想定していたのかは不明だが、作業量と、ヒーレー・ブランドの維持に必要な資金を考えると、安くはなかったはず。
フォードも、この素晴らしさには気づいていたのだろう。1981年に、ヒーレー・フォード・フィエスタと同じ構成を採用した、フィエスタ XR2をリリースしている。庶民にも現実的な価格で。
大手の自動車メーカーに、美味しいところだけを持っていかれたといえるヒーレー。結局、英国の小さな名門は、厳しい現実に揉まれただけだった。
協力:クラシックモビリア社
番外編:マーケターが考えたヒーレーとの共作
アメリカ・デトロイトを拠点にする、マーケティングの専門家だったゲイリー・コーズ氏は、フォードやフォルクスワーゲンをクライアントにしていた。そんな彼は、小さなフィエスタに大きな期待を寄せた。
フォードに在籍した経験を持つデザイナー、ハリー・ワイクス氏へ接近。フィエスタをベースに、高級な雰囲気を引き出して欲しいと依頼している。
ワイクスは、ハッチバックのサイドラインをツートーン塗装で強調。ワイドなアルミホイールを覆う、ボディキットも想定したスタイリングを描き出した。スケッチでは、ホイールの直径は大きく見えないが、ロールケージは組まれていた。
フロントグリルも変更され、バンパーとの一体感を高めることが提案された。しかし、この案は実現していない。ヒーレー・フォード・フィエスタでは、フェンダーパネルが叩き出され、フロントスポイラーが追加されるに留まった。
コーズは、ヒーレーとの別のコラボレーションも考えていた。ひと回り大きいハッチバックのデザインを、ワイクスに依頼している。彼の洗練されたスケッチに反して、フォードで試作されたコンセプトカーは冴えない見た目だったが。
ボディは、ヒーレー・フォード・フィエスタと同じ、ブリティッシュ・グリーンで塗装。ヒーレーの名前を掲げるという合意も得ていたという。1982年から1983年のモーターショーへ出展されているが、これも量産には至っていない。