ヤマハが「次世代EVスポーツカー」に高出力モーター搭載へ 英ケータハムと提携 試作車は来年完成予定

公開 : 2024.10.03 06:25  更新 : 2024.10.03 07:15

ヤマハ発動機は、ケータハムが開発中の新型EV「プロジェクトV」向けの電動パワートレインを独自開発する。272馬力のモーターを供給する可能性がある。

長期の「話し合い」が結んだ協業

ヤマハ発動機は10月2日、英国のケータハムの次世代スポーツカー「プロジェクトV」向けに電動パワートレインを開発すると発表した。2025年半ばまでにプロトタイプ車両の製作を目指す。

プロジェクトVは昨年コンセプトモデルが発表された2+1の3人乗りクーペで、目標価格は8万ポンド(約1500万円)以下とされる。ヤマハはパワートレイン主要部の「eアクスル」を独自開発し、「車両の運動制御においても当社の技術や知見を提供」するとしている。

ケータハムが開発中の「プロジェクトV」
ケータハムが開発中の「プロジェクトV」

パワートレインの詳細はまだ公表されていないが、コンセプトモデルでは1基の電気モーターで最高出力272ps(200kW)を発生し、0-100km/h4.5秒以下と謳われた。

ヤマハはすでに自動車用モーターを開発しており、高効率の導体と「これまでのエンジン開発で培った」知見により、「業界最高レベルの出力密度を実現する」と説明している。

注目すべきは、1基あたり272ps(プロジェクトVコンセプトと一致)を発生する4基の高出力モーターを、スバルのコンセプトカー「STI E-RA」に搭載していることだ。同車の合計出力1088psに達し、ニュルブルクリンクのラップタイム6分40秒を目標としている。

また、ヤマハは最近、ローラ・フォーミュラEチームのテクニカル・パートナーとなり、12月から始まる第11シーズンでデビューを飾る予定だ。

ケータハムのボブ・レイシュリー最高経営責任者(CEO)はAUTOCARの取材に対し、次のように語った。

「ご想像の通り、ヤマハのようなグローバル企業は、綿密な議論や検討なしに決断を下すことはありません。プロジェクトVに関する話し合いは、長い時間をかけて熟成されてきました。彼らと一緒に仕事ができることを非常に光栄に思っており、今日このような発表ができることはケータハムブランドにとって素晴らしいニュースです」

「他の選択肢ではなく、なぜヤマハだったかというと、ヤマハにはOEMを技術面でサポートしてきた長い実績があり、二輪車事業を通じて重量最適化の必要性を明確に理解しているからです。最終的には、双方の合意による決定となりました」

複数の日本企業が深く関わることに

ヤマハは二輪車事業で世界第3位のシェア(2022年)を誇るが、四輪のロードカーを量産したことはない。ただ、2015年にゴードン・マレー氏と共同でデザインした小型スポーツカー「スポーツライド・コンセプト」を公開するなど、四輪車への関心は高い。

時代を遡れば、1990年代初頭にもV12エンジン搭載のスーパーカー「OX99-11」のプロトタイプを少数製作している。

2015年に公開されたヤマハ「スポーツライド・コンセプト」
2015年に公開されたヤマハ「スポーツライド・コンセプト」

いずれも量産化には至らず、ヤマハは2018年末に独自の四輪車開発の凍結を発表した。しかし、プロジェクトVのパワートレイン開発においては、パッケージング、構造、エンジニアリングに関する知見を活用できることは間違いない。

レイシュリーCEOは、「これまでと変わらず、軽量で、シンプルで、運転するのが楽しい」クルマを目指すとしている。

プロジェクトVのプロトタイプは2025年半ばまでに完成する予定だが、量産車の発売時期は当初予定されていた2026年より遅れる可能性があるという。

「最終的な生産開始(時期)については推測したくありませんが、2026年は難しいでしょう」とレイシュリーCEOは語った。

プロトタイプの開発・製作には、東京R&Dも参画する。東京R&Dはこれまで、国内メーカー向けにさまざまな実験用プロトタイプやテスト車両、コンセプトカーの開発に携わってきた。また、2004年から2008年まで、ホンダ製エンジンを搭載したコンパクトな2シーター・スポーツカー「Vemac RD200」を生産していた。

ケータハムは日本のVTホールディングス傘下にあり、今回も日本企業2社との提携となる。とはいえ、プロジェクトVの生産は日本で行われるわけではなさそうだ。エンジンを搭載したセブンシリーズは英国で生産されている。

しかし、ケータハムは以前、プロジェクトVの生産については既存のダートフォード工場ではなく、委託生産も視野に複数の企業と交渉を進めていることを明らかにした。レイシュリーCEOは「生産地については未決定」としている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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