「当たり前」すぎる存在 コルサで小さな自動車博物館を巡る(1) コンパクトカーの楽しさを再実感

公開 : 2024.10.19 09:45

英国がモータースポーツの拠点になった起源

1972年に、結婚式のウェディングカーとしてビュイックのレンタルを開始。以来、コレクションの数は増えていった。クルマの貸し出しは、現在も続いている。

2024年2月には、レーシングドライバーのケケ・ロズベルグ氏がドライブした、1985年式ウイリアムズF1マシンが展示に加わった。収蔵する車両は100台以上で、面白いくらい多様。「沢山のクルマを、寄付していただいています」。ベネットが説明する。

アトウェル・ウィルソン自動車博物館に移築された、ジャック・フレンチ氏のワークショップ
アトウェル・ウィルソン自動車博物館に移築された、ジャック・フレンチ氏のワークショップ

筆者が興味深いと感じたのが、ラリードライバーのパディ・ホップカーク氏がドライブした、オリジナルのミニ・クーパー。9Xプロジェクトの一環で作られた、技術者のアレック・イシゴニス氏による次期ミニの試作車もある。これは、3台しか現存しない。

それ以上に筆者の心を惹き付けたのが、オースチン・セブンのマニアで、技術者でもあったジャック・フレンチ氏が所有した古い小屋。75年ほど前に、彼はシンプリシティというキットカーをこの中で製作し、モータースポーツ界に大きな影響を与えた。

現在の英国が、レーシングカーの世界的な拠点へ成長できた起源の1つといっていい。フレンチの自宅にあったワークショップが、アトウェル・ウィルソン自動車博物館の敷地へ移築されている。小さくても、歴史的な建造物だ。

この博物館には、年間5000名以上の訪問者がある。カークラブイベント拠点としても、賑わっているという。

小さなクルマの楽しさを改めて実感

次に向かったのは、ここから60kmほど北にある、ボートン・オン・ザ・ウォーターという町。気持ちの良い一般道で、コルサを快調に走らせる。小さなクルマの楽しさを、改めて実感する。

全長は4060mm、全幅は1765mm。今でもちゃんと、コルサはコンパクトカーだ。コーナリングの限界は高く、パワートレインは充分活発に思える。

ヴォグゾール(オペル)・コルサ 1.2ターボ・ハイブリッド 100PS GS(英国仕様)
ヴォグゾールオペル)・コルサ 1.2ターボ・ハイブリッド 100PS GS(英国仕様)

ちなみに、同行してくれたカメラマンのジャック・ハリソンは、マニュアルのコルサ・オーナー。ハイブリッドではない、1.2Lモデルに乗っている。ハイブリッドの車重は1267kgだが、1175kgと軽い。

ボートン・オン・ザ・ウォーターは、意外にも外国人観光客が多かった。アイスクリーム・ショップには、行列ができていたほど。その中心部に、コッツウォルズ自動車博物館が位置する。

この博物館は、英国の公務員自動車協会が管理している。無数のミニカーや、電動バイク、キャンピングカー、記念品などが所狭しと並んでいる。館内にはちょっと昔の音楽が流れ、雰囲気はバッチリ。空間としてのコダワリも感じさせる。

筆者は、過去に訪れたことがある。ゆっくり見学するなら、観光客が少ない冬場が良いだろう。ホットチョコレートも楽しめる。

予想以上の混雑ぶりで、今日は早々に退散することにした。今夜宿泊する、グレートブリテン島中東部のコニングスビーまで、これから200km以上走る必要もある。

この続きは、コルサで小さな自動車博物館を巡る(2)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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