最新フェラーリ「12チリンドリ」へ試乗! フロントはデイトナを彷彿 象徴的な至高のFR GT

公開 : 2024.10.03 19:05

3速と4速で調整されるトルクカーブ

公道へ出れば、パワー感やキャラクターは、812 コンペティツィオーネと同様に極めて異彩。自然吸気のV12エンジンは内部が軽量化され、颯爽と9500rpmまで跳ね上がる。

当たり前だが、秘めた全力を公道で解き放つことはできない。そしてフェラーリの技術者は、日常的な範囲でも楽しめるべきだと判断した。3速と4速にある時、2000rpmから5000rpmのトルクカーブが調整され、リニアなレスポンスを叶えている。

フェラーリ12チリンドリを運転する筆者、マット・プライヤー
フェラーリ12チリンドリを運転する筆者、マット・プライヤー

最大トルクに変化はなく、ダイレクト感は素晴らしいのヒトコト。低回転域では図太い音が響くものの、重々しくは聞こえない。走行時の中心となる中回転域では、調律されたハーモニーを鑑賞できる。

高回転域では、圧巻のクレッシェンドを披露するが、ここへ到達できる時間が公道では限られる。あっという間に速度は上昇し、右足を緩めざるを得ないのが残念だ。

8速デュアルクラッチATは、過去にないほど変速が速く滑らか。電子制御のリミテッドスリップ・デフと合わせて、ドライブモードに応じて、ECUが統合管理している。バイワイヤのブレーキシステムと、アクティブ後輪操舵、スタビリティ・コントロールも。

タイヤは、フェラーリF50以来となるグッドイヤー。12チリンドリ専用開発の、イーグルF1スーパースポーツを履く。これは主にサーキット用で、長距離旅行用にミシュラン・パイロットスポーツ S5も設定される。

ドライバーを軸に旋回 磁性流体で快適性も優秀

812 スーパーファストの操縦性は、電光石火といえるほどシャープだった。ミドシップモデル水準の敏捷性を得るため、幅の広いフロントタイヤを組みつつ、ドラマチックさを高めていた。

かくして12チリンドリは、それ以上。シリアスさは強化されていなくても、運転の魅力は薄れていない。ステアリングのレシオは、812 スーパーファストと同じ。ロックトゥロックは2回転もないが、神経質でも過敏でもない。

フェラーリ12チリンドリ(欧州仕様)
フェラーリ12チリンドリ(欧州仕様)

ステアリングホイールには適度な重さがあり、反応は流暢。落ち着きすら感じさせる。ホイールベースが短くなり、シートはリアアクスル側へ近づいているが、そんな感覚も伴わない。フロントフェンダーの峰が、運転中の視界に入るからかもしれない。

フェラーリの技術者は、ドライバーの腰の辺りを軸に旋回するように感じるはずだと話していた。確かに、少し離れたフロントノーズは鋭敏に反応するが、クルマの後ろ側に座っているような印象はない。

フェラーリの乗り心地が良いことは、12チリンドリでも共通している。磁性流体を用いだ可変ダンパーが組まれ、マネッティーノ・ダイヤルを回すだけでソフトになる。姿勢制御も素晴らしい。ドライバーズカーの高度な技術として、最高峰の1つだと思う。

タイヤサイズは前が275/35で、後ろが315/35と、肉厚ではない。それでも、出色の衝撃吸収性に唸ってしまう。長距離走行時は、従来以上に快適といえる。同時に、ワインディングでは直感的に振り回せるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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