【第1回】森口将之の「もびり亭」にようこそ:クルマとモビリティはどこがどう違うのか

公開 : 2024.10.09 17:05

公共交通はプラス要素いっぱい

実は追い風になりそうな技術もあります。たとえば自動運転は、マイカーでのレベル4は遠い未来の話ですが、自動運転移動サービスは全国各地でレベル2が実用化しており、すでにレベル4に進化しているところもあるからです。

バス会社の支出の半分以上は人件費と言われています。自動運転移動サービスが実用化すれば、経営状況が改善して、減便や路線廃止に歯止めがかかるかもしれないし、運転士不足や高齢化の問題も解消に向かうかもしれません。

茨城県境町の自動運転バス。
茨城県境町の自動運転バス。    森口将之

多くの人がクルマでの移動にこだわる理由のひとつに、ドアtoドアの利便性があります。逆に鉄道やバスは、自宅や会社と駅や停留所が離れがちです。そこで近年はこの領域に、自転車や電動キックボードのシェアリングサービスが登場しています。

さらにドアtoドアに近づける手法として、これまでは別々だった鉄道やバス、シェアリングなどの経路検索や運賃決済を、単一のスマートフォンアプリにまとめたサービスも出てきました。

これがMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)で、2016年にフィンランドのヘルシンキで初めて導入されると、世界的に話題になり、現在は日本でも、レベルの違いはあるものの、各地で導入が進んでいます。

もともと自転車や電動キックボードのシェアリングはスマートフォンのアプリで予約などをしていたし、タクシーの配車アプリも同様です。これらをひとつに統合すれば、MaaSになるというわけです。

たしかに公共交通は現在、さまざまな課題に直面しています。でもモビリティサービス全体でみると、カーボンニュートラル、運転免許返納、自動運転、MaaSなど、プラス要素も多いことがわかります。

自動運転もMaaSも、移動可能性というモビリティ本来の意味から出てきたサービスです。だからクルマを作る人はもちろん、走らせる人もモビリティの意義を理解し、すべての人が移動しやすい社会の実現を考えてほしいと思っています。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

森口将之の「もびり亭」にようこその前後関係

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