スズキ・アルトX

公開 : 2015.01.21 23:40  更新 : 2022.12.12 21:30

■どんな感じ?

メガネがモチーフというフロント・フェイスも、自慢のプロポーションも、昔のフィアット・ティーポみたいなリアの造形も、なんだか古臭いように私は思えた。好きになるのに1秒もいらない。好きにならないのも1秒、嫌いなものはたいてい一生である。ところが、走り出したら、好きになった。1秒もかからなかった。なにより、軽快なのだ。小さなクルマを駆る歓び、シトロエン2CVにも通じるようなベーシック・カーを走らせるオモシロさを直感的に感じた。一般道をそこそこの速度で走っただけではあるけれど、ハンドリングが楽しい。コーナーで粘る。アンダーステアが出ない。

吸排気にVVTを備えたR06A型エンジンとCVTの組み合わせは、0.66ℓ自然吸気とは思えぬほどの活発ぶりだ。十分速い。ウカツを絵に描いた人間であるところの筆者は、これはターボであるか、と思い込んだ。先月、木更津で試乗したダイハツ・ムーヴワゴンRのライバルのトール・ワゴンであるにしても、あちらのムーヴXは車重820㎏である。舞浜で試乗中のこちらのアルトXは650㎏で、170㎏も違う。軽いってスバラシイ!

この軽さの見返りに、エンジン音もロード・ノイズもそれなりに大きい。エンジンは回すと盛大にうるさい。それが、ナチュラルなことに感じられる。だから、むしろ元気が出る。自動車が走れば、騒音が出るのは当たり前だ。

乗り心地は、小さいクルマなりにがんばっている。小さいクルマだから、当たり前である。路面のうねりや凸凹に敏感に反応する。これこそ自動車のライブ感である。

室内は十分広い。とりわけ前席のヘッド・ルームは全高が先代より45㎜低められたことがまったく影響していない。ホイールベースが60㎜拡げられた恩恵で、後席も大人がちゃんと座れる。小柄な人だったら苦情は出ないだろう。

室内のデザインは、シンプルにしようという気持ちはわかるけれど、やっぱりキティちゃんが似合いそうなカワイイ系である。どうして昔のソニーのような、あるいはジョブズ時代のマックのようなデザインができないんぢゃ、と思うわけだけれど、それができれば苦労はない。

記事に関わった人々

  • 今尾直樹

    Naoki Imao

    1960年岐阜県生まれ。幼少時、ウチにあったダイハツ・ミゼットのキャビンの真ん中、エンジンの上に跨って乗るのが好きだった。通った小学校の校長室には織田信長の肖像画が飾ってあった。信長はカッコいいと思った。小学5年生の秋の社会見学でトヨタの工場に行って、トヨタ車がいっぱい載っている下敷きをもらってうれしかった。工場のなかはガッチャンガッチャン、騒音と金属の匂いに満ちていて、自動車絶望工場だとは思わなかったけれど、たいへんだなぁ、とは思った。

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