復活したホントの1号車 最初のベントレーTシリーズ(2) ミラーレスの完全オリジナル

公開 : 2024.10.26 17:46

サイドミラーのない完全なオリジナル

スタジオに持ち込んでいただいたT1は、まさに新車時のまま。精悍な姿で過度な主張はない。先代に当たる1962年のベントレーS3と比べると、驚くほど全幅が狭い。Tシリーズは、混雑化する1960年代の交通事情へ適した、扱いやすいクルマが想定されていた。

完全なオリジナル仕様へ戻されており、ドアミラーだけでなくフェンダーミラーもない。エアコンは備わらず、バックミラーは小ぶり。ラジオは、FMすら受信できない。

ベントレーTシリーズのレストア作業の様子
ベントレーTシリーズのレストア作業の様子

ボンネットを開くと、オールアルミ製のV型8気筒エンジンが姿を表す。発電を担うのは、現代的なオルタネーターではなく、ダイナモだ。セイヤーは、エンジンが軽くノッキングしていることを付け加える。「徐々に、落ち着いてきたようですが」

複雑なブレーキと4速オートマティックは、リビルドされている。それ以外のメカニズムは、想像以上に良好だったという。

ドアを開くと、真新しいウッドパネルとレザーが広がる。くびれたドアハンドルは、初期型の証。古き良き、チッペンデール・スタイルのダッシュボードが美しい。外気を導入できるヒンジ付きパネル、「テキサス・フラップ」も備わる。

このクルマを救い出すことの重要性

フロントシートに座った、セイヤーが微笑む。「運転してみると、凄く面白いんですよ。発進は想像以上に鋭くて、ブレーキも驚くほど良く効きます。ステアリングは、慣れるまで不自然でしょうね。筆で絵の具を混ぜているように、手応えが弱いんです」

過小評価されてきたTシリーズへ光が向けられたことは、筆者も素晴らしいと思う。「ベントレーのヘリテージ・モデルのラインナップには、空白がありました。これが、一連のクラシック・ベントレーを自社で管理する、きっかけにもなりました」

ベントレーTシリーズのレストア作業の様子
ベントレーTシリーズのレストア作業の様子

「T1は、ブランド不遇の時代に生まれたモデルといえます。でも、歴史から逃れることはできません。このクルマを救い出すことの重要性は、明らかといえました」

撮影:マーク・リッチーニ(Mark Riccioni)

ベントレーTシリーズ(1965〜1977年/英国仕様)のスペック

英国価格:6496ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約672万円/現在)以下
生産数:1712台
全長:5169mm
全幅:1803mm
全高:1518mm
最高速度:185km/h
0-97km/h加速:10.9秒
燃費:4.2km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:2067kg
パワートレイン:V型8気筒6230cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:−ps
最大トルク:−kg-m
ギアボックス:4速オートマティック(後輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーティン・バックリー

    Martin Buckley

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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