ルノーが燃料電池車「エンブレム」初公開 水素と電気で走るスポーティなクーペSUVコンセプト

公開 : 2024.10.09 06:25

ルノーは水素燃料電池技術を採用したコンセプトカー「エンブレム」を公開した。バッテリーEVをベースにしつつ、航続距離を延ばす「レンジエクステンダー」として水素を併用する。

EVの「レンジエクステンダー」として水素利用

フランスのルノーは10月4日、水素燃料電池を搭載した新型のコンセプトカー「エンブレム(Embleme)」を発表した。生産から廃車までのCO2総排出量を従来のガソリン車よりも90%、バッテリーEVよりも80%削減できるという。

全長4.8m、全高1.52m、ホイールベース2.9mのクーペSUVで、動力源として2.8kgの水素タンクと30kWの燃料電池、容量40kWhのニッケル・マンガン・コバルト(NMC)バッテリーを組み合わせている。

ルノー・エンブレム・コンセプト
ルノー・エンブレム・コンセプト    ルノー

バッテリーが2kWh以下のトヨタ・ミライヒョンデ・ネクソとは異なり、ルノー・エンブレムは燃料電池の使用を最小限に抑えるように設計されている。バッテリーに蓄えた電力で走行し、バッテリーが減ると水素を使用して充電する。

ルノーによると、エンブレムは、水素補充のために5分間の停車を2回行ったとして、現在のエンジン車と同じ時間で1000kmを走行できるという。

さらに、パリからマルセイユまでの移動では、使用電力の約75%が水素でまかなわれるという。

エンブレムは正式にはコンセプトカーだが、市販EVのメガーヌEテックやセニックEテックと同じ「Amprミディアム」プラットフォームをベースにしている。

セニックEテックは市販車の発売前に水素コンセプトとして初めて公開されたため、エンブレムの市販バージョンが最終的にEVとして登場する可能性はある。

エンブレムは希土類元素(レアアース)未使用の電気モーター1基をリアアクスルに搭載し、最高出力217ps(160kW)を発生する。車両重量は1750kgで、セニックEテックより約100kg軽いという。

ルノーはアルピーヌF1チームのノウハウを活用し、エアロダイナミクスを最優先に設計した。例えば、空気抵抗を誘発するミラーの代わりにカメラが採用されたほか、底面はフラットに密閉され、アクティブディフューザーが装備されている。

その結果、空気抵抗係数Cd値は0.25となり、メガーヌEテックの0.29よりも優れている。

エンブレムの生産から廃車まで(ゆりかごから墓場まで)のCO2総排出量は、メガーヌEテックの24トン、ガソリン車のキャプチャーの49トンを下回る5トンとされる。

10月15日に開幕するパリ・モーターショーではエンブレムの実物大モデルが一般公開される予定だが、内装はない。ルノーは、10月末に同車を「完全な形」で発表するとしている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・マーティン

    Charlie Martin

    英国編集部ビジネス担当記者。英ウィンチェスター大学で歴史を学び、20世紀の欧州におけるモビリティを専門に研究していた。2022年にAUTOCARに参加。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事