過給器が追加した「興奮」 ポルシェ944 ターボ(2) クラス最高水準の大人なグランドツアラー
公開 : 2024.10.27 17:46
VWとの共同プロジェクトで生まれた、4気筒のFRポルシェ 流用技術の調和が取れていた924 ル・マン総合7位の944プロトタイプ 進化の過程とターボSEの魅力を英編集部が振り返る
もくじ
ー944に興奮を追加したターボチャージャー
ーカップカーがベースの最終進化形 ターボSE
ー高水準なグランドツアラー 大人な安楽さ
ードライバーを育成した当時のクラスリーダー
ーポルシェ944 ターボ(1985〜1991年/欧州仕様)のスペック
944に興奮を追加したターボチャージャー
1981年のル・マン24時間レースは、ポルシェ944のマーケティングとして理想的な戦績といえたが、市販仕様の944 ターボの発売は4年後。それでも、ひと足先に1981年のドイツ・フランクフルトで発表された自然吸気の944には、熱狂的な反響があった。
ワイドでたくましいスタイリングと、ポルシェ独自のエンジンを搭載することへ、多くのクルマ好きは惹き付けられた。8バルブのエンジンは165psで、同時期のマツダRX-7や三菱スタリオンなどに、大差を付けるほどの速さではなかったが。
自然吸気の944へ試乗した当時の自動車雑誌、ロード&トラック誌は、印象を次のようにまとめている。「性能も燃費も、ポルシェ924 ターボより優れるとは主張されていません。主な違いはイメージと、更なる進化の可能性でしょう」
そして1985年、満を持して944 ターボが登場。AUTOCARは早速試乗し、「自然吸気の944も有能なスポーツクーペですが、ターボには興奮が追加されています」。と肯定的に紹介している。
2.5L 4気筒エンジンにターボを組むことで、最高出力は223psへ上昇。最大トルクは、20.8kg-mから33.5kg-mへ強化され、0-100km/h加速は7.4秒から6.0秒へ縮められた。大幅な性能アップにより、3.2Lフラット6のポルシェ911へ接近したともいえた。
カップカーがベースの最終進化形 ターボSE
同時に、サスペンションのスプリングとダンパー、アンチロールバーも改良。フロントのウイッシュボーンとリアのトレーリングアームは、スチールの溶接からアルミの鋳造へ変更された。操縦性のバランスが磨かれ、走りは見違えて良くなっていた。
当時のAUTOCARは、続けてこうまとめている。「ポルシェは、944 ターボが911の販売にどんな影響を与えるのか、懸念しているに違いありません」。それから40年が過ぎた今では、これが杞憂に過ぎなかったことは明らか。911は、好調に売れ続けた。
944の最終進化版、ターボSEが登場したのは1988年。その時も、911との関係性には注目が集まった。ワンメイクレースを戦うカップカーをベースに、ポルシェ928のブレーキを流用。調整式ダンパーに、ハードなスプリングとアンチロールバーが組まれた。
新しいターボも採用し、最高出力は250psへ向上。リミテッドスリップ・デフがパワーを受け止め、0-100km/h加速は5.7秒を達成している。最高速度は260km/hに届き、スーパーカーの領域へも迫った。
1989年には、通常の944 ターボは同等の仕様へアップデート。今回、ポルシェ・ミュージアムからお借りしたシャンパン・ゴールドの1台も、まさにそれに当たる。向かうのはアルプス山脈の北側、ドイツ・シュヴァーベンのワインディングだ。