過給器が追加した「興奮」 ポルシェ944 ターボ(2) クラス最高水準の大人なグランドツアラー
公開 : 2024.10.27 17:46
高水準なグランドツアラー 大人な安楽さ
ドアを開きシートへ身体を沈めると、快適な運転姿勢を見つけにくい。1985年の944 S2からステアリングホイールの位置は若干持ち上げられたが、座面の位置が高く、太ももの上へ伸びている。シートを後ろに設定し、腕を伸ばすスタイルが良いようだ。
2.5L 4気筒エンジンを始動させると、落ち着いたアイドリングが始まるまで、かなり回転が荒っぽい。それでも、バランサーシャフトは巧妙。数kmほど進み全体が温まると、質感は滑らかになっていく。
速度を高めると、当時の基準でなくても、高水準なグランドツアラーだという特徴が滲み出てくる。アクセルペダルを傾ければ、ターボエンジンが遅れることなくパワーを生成。5速MTのどのギアでも、強力にクーペボディを押し出す。
カーブでは、同年代の911より明らかに扱いやすい。乗り心地も、今の基準で判断しても褒められる。この安楽さが大人な感じで、944 ターボの大きな魅力といえるだろう。
筆者は3.0L 16バルブの944 S2へ、以前に長時間試乗したことがある。それと比べると、944 ターボの方が運転体験はモダンだとも感じた。
ドライバーを育成した当時のクラスリーダー
ちなみに、このポルシェは若手ドライバーを数多く育成してもきた。同社のワンメイクレース、ターボ・カップは1986年に944 ターボでスタートしている。マシンは量産車と内容が近く、ドイツ・ネッカーズルムの工場で並行的に生産された。
ターボ・カップは高い人気を誇り、ドイツだけでなくフランスや南アフリカ、カナダ、アメリカでも開催。944 ターボの公道用モデルの技術開発にも、大きな貢献を果たしている。1990年代からは、911の市販車ベースへシリーズは変化しているが。
フロントエンジンでトランスアクスルのポルシェは、968を最後に終わってしまう。しかし、924の登場から半世紀が過ぎた今、再評価すべきクラシックだといえる。当時のクラスリーダーといえる水準へ、944ターボが進化していたことは明らかなのだから。
協力:ポルシェ
撮影:ローマン・レッツケ(Roman Ratzke)
ポルシェ944 ターボ(1985〜1991年/欧州仕様)のスペック
英国価格:3万9893ポンド(新車時)/3万5000ポンド(約762万円/現在)以下
生産数:2万5245台(944 ターボ合計)
全長:4290mm
全幅:1735mm
全高:1275mm
最高速度:260km/h
0-97km/h加速:5.7秒
燃費:6.7km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1347kg
パワートレイン:直列4気筒2479cc ターボチャージャーSOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:250ps/6000rpm
最大トルク:35.6kg-m/4000rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)