ポルシェ・タイカン vs ヒョンデ・アイオニック5 N 同予算の電動ドライバーズカー 新車か中古車か?(1)

公開 : 2024.10.22 19:05

ドライバーとの一体感を巧みに醸成

動力性能では、アイオニック5 Nが優勢。2基の駆動用モーター合計での最高出力は、通常時が609ps。短時間だけなら、650psへブーストできる。最大トルクは78.3kg-mに達し、0-100km/h加速は驚きの3.5秒だ。

ステアリングホイールを握ってみれば、速さは数字以上。レスポンスはまさに電光石火で、笑いを堪えるのが難しいほど。

ヒョンデ・アイオニック5 N(英国仕様)
ヒョンデ・アイオニック5 N(英国仕様)

ステアリングホイール上のNボタンを押すと、8速ATを模した変速が仮想的に再現される。ギミックのように思えるかもしれないが、実際は唸るほど効果的。50km/h程度で8速に入れると、エンジンのように、電気モーターが苦しそうに回る。

バッテリーEVでありながら、ドライバーとの一体感を巧みに醸成している。合成のエンジン音は、余り好ましい印象ではないとしても。

他方、タイカンは安定の好印象。今回の車両は素のスポーツツーリスモだから、シングルモーターの最高出力は407psで、0-100km/h加速は5.4秒。一層鋭い走りがお望みなら、530psある中古のタイカン 4Sも、同程度の価格で見つかるはず。

タイカン最大の魅力は、優秀なシャシー。落ち着いた走りと、コミュニケーション力の高さは、ポルシェならではといっていい。スチールコイルのサスペンションでも、乗り心地はアイオニック5 Nより遥かにしなやかだ。

洗練という言葉が、ピッタリ当てはまる。エグゼクティブ・クラスのステーションワゴンで間違いない。

ポルシェ911へ通じる味わい 狂気の電気自動車

アダプティブダンパーを引き締めると、ポルシェ911へ通じる味わいも放つ。ステアリングホイールは適度に重く、反応は鋭く自然。タイトな姿勢制御で、機敏に回頭していく。ボディサイズや重さを感じさせないほど。

シングルモーターの後輪駆動だから、コーナーでのライン調整も自由度が高い。瞬間的に発生するトルクを活かし、スタンスを意のままに変えていける。ドライブモードを選ぶだけで、安楽な特性を簡単に呼び出すこともできる。

ポルシェ・タイカン・スポーツツーリスモ(2023年式/英国仕様)
ポルシェ・タイカン・スポーツツーリスモ(2023年式/英国仕様)

アイオニック5 Nにも各モードは用意されるが、選択項目は多すぎるかも。ダンパーとステアリング、リミテッドスリップ・デフ、モーターのトルク割合などを、任意にカスタマイズできる。

とはいえ、悩まずデフォルトのままで不満はない。シートの座面は、通常のアイオニック5より20mm低く、ボディに包まれた印象を抱ける。乗り心地も良い。

ドライブモードを引き上げると、狂気の電気自動車の側面が現れる。速度が増すほど、活き活きとした本性が顕になる。タイカンより155kg重い、2235kgの車重を巧みに覆い隠し、アイオニック5 Nはバレエダンサーのように身をこなす。

フロントタイヤのグリップ力は高く、姿勢制御は優秀。フラットに高速コーナーを駆け抜ける。ブレーキを引きずりながら侵入すれば、スタンス調整も可能。出口目がけて、パワー・オーバーステアに興じることも難しくない。

物理法則へ立ち向かう、電気的な制御が働いていることは間違いない。しかし、あくまでも自然だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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