DSがユニークな新型「高級SUV」導入へ 苦戦するDS 9に代わるフラッグシップモデル、年内発表か

公開 : 2024.10.14 06:05

DSオートモビルは新型の高級SUV「DS 8」の投入準備を進めている。セダンとSUVの中間的なデザインで、欧州市場での足場固めに苦戦するDSにとって重要な新世代モデルとなる。2025年の発売が見込まれる。

不振のセダンに代わる高級SUV

フランスのDSは、次世代のフラッグシップモデルとして新型「DS 8」(仮称)を2025年に導入する計画だ。セダンとSUVの中間的なボディ形状で、現行のDS 9に代わる最上位車種になると予想されている。

DSがシトロエンから分離して独立ブランドとなってから今年で10年が経過する。各車の電動化と市場シェア拡大に取り組む中、DS 8はその新しいラインナップの先陣を切ることになる。

DS 9(写真)に代わるフラッグシップモデルが来年登場する見込み。
DS 9(写真)に代わるフラッグシップモデルが来年登場する見込み。

欧州市場での足場固めに苦戦しているDSにとって、今はまさに正念場とも言える時期だ。8月末までの新車販売台数は欧州全体で前年比33%減の2万6173台となり、そのうちDS 9はわずか234台にとどまる。右ハンドルの英国では、同期間中にわずか3台しか売れていない。

DSの親会社であるステランティスは2021年、プジョーフィアットジープなど各ブランドに10年間の財務支援を行うと宣言した。特に業績不振で厳しい監視下に置かれているのはマセラティだが、売上への貢献が少ないDSも危うい立場にある。

DSは2027年から新車販売をすべて電気自動車(EV)に移行するという計画に従い、上級のアッパーセグメントで競争力を高めるために製品ラインナップの全面的な見直しも行う。

その急先鋒となる新型DS 8は、新時代におけるブランドの意思表示としての役割を果たす。新しいパワートレインを導入し、大胆な新しいデザインを採り入れ、アウディジェネシスなどと競合する。

DS 8はイタリアのメルフィにあるステランティスの工場で生産される。同工場では、オペルランチアの新型車も生産される予定だ。

セダンとSUVの中間的なスタイル

欧州ではカモフラージュされたDS 8のプロトタイプが目撃されており、全体のシルエットやボディサイズが確認できる。そのスタイリングは、セダン、ファストバック、SUVの要素を取り入れており、兄弟ブランドであるシトロエンのC5 Xと似ていなくもない。

DSは現在、SUVモデルを主に取り扱っており(DS 9を除く)、欧州の販売チャートではSUVが優位を保っていることから、今後のモデルでもSUVに傾倒する可能性が高い。

シトロエンSMにインスパイアされたコンセプトカー「DS SMトリビュート」
シトロエンSMにインスパイアされたコンセプトカー「DS SMトリビュート」    DS

とはいえ、DS 8は従来型のSUVのスタイリングとは一線を画し、より個性的で目立つ外観を追求しているようだ。

また、最近公開されたDSのコンセプトカー「SMトリビュート」から大きな影響を受けていると予想される。1970年代のシトロエンSMへのオマージュであり、低車高のクーペだが、今後の市販車デザインを示唆するものである。

DSのデザイン責任者であるティエリー・メトロス氏は、SMトリビュート・コンセプトのレトロフューチャーなデザインについて、「DSオートモビルズのモデルや将来のプロジェクトにおけるディテールを多く盛り込んだ」と述べている。

一方で、2020年に発表された比較的オーソドックスなSUVコンセプト「エアロ・スポーツ・ラウンジ」は、もはや未来を予見するものではなくなったのだろう。燃費性能やEVの航続距離に大きな影響を与える空力性能といった観点からも、DSは伝統的な形状のSUVから完全に脱却する可能性がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ウィル・リメル

    Will Rimell

    英国編集部ライター
  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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