426kmの航続距離は印象的 BYDドルフィン・コンフォートへ試乗 未完成な部分もチラホラ

公開 : 2024.10.27 19:05

動力性能に不満なし 運転の楽しさは高くない

今回は複数のドルフィンへ試乗したが、ブースト・グレードのフロントに載る149psの駆動用モーターは、このクラスのハッチバックへ期待通りのパワー感。アクセルペダルを急に踏むと、フロントタイヤが受け止めきれない瞬間はあるが。

コンフォートとデザインには、アット3と同じ203psのモーターが載る。同じ馬力でも車重が軽いため、ドルフィンの方が走りは軽快。0-100km/h加速は7.0秒でこなす。そのかわり、フロントタイヤのトラクションが失われる場面も多くなる。

BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)

カーブで積極的にアクセルペダルへ力を込めると、トラクション・コントロールがしばしば介入する。だが、アット3よりトルクステアは小さい。余程気張って運転しない限り、マナーが乱れることはないはず。

アクセルオフ時の回生ブレーキは、最も強い状態にしても効きは弱め。ブレーキペダルの感触は柔らかく、どの程度踏むべきか判断が少し難しいと感じた。

乗り心地は、リンロン・コンフォートマスター・タイヤのサイドウォールが薄いこともあり、細かな入力の吸収性はさほど良くない。流れの速い幹線道路では、舗装の剥がれた穴や隆起部分で安定性へ影響が出てしまう。

ステアリングホイールは軽く回せるが、情報量は希薄。高速道路で不安を感じるほどではないものの、反応はおっとり気味だ。

サスペンションはソフト指向だから、姿勢制御はタイトではない。カーブの途中にある凹凸は苦手といえ、若干の浮遊感を伴う。運転の楽しさは期待しない方が良いだろう。

装備充実 英国ではMG 4をコスパで超えない

英国仕様の装備は充実しており、すべてのグレードで高効率なヒートポンプ式エアコンと、360度カメラ、アダプティブ・クルーズコントロールを含む運転支援システムが備わる。駆動用バッテリーからの給電機能も付いてくる。

新車保証は、最大6年間か15万kmまで対応。パワートレインは、8年間か20万kmまで保証される。ただし、英国にはMG 4という強敵がいる。価格は近似し、航続距離はより長いのだ。

BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)
BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)

かくして、この価格で426kmの航続距離は印象的なものながら、ドルフィンの競争力は、そこまで高いとはいえないだろう。普段使いの走りは悪くなく、車内は居心地が良いものの、未完成な部分もチラホラ存在する。

制限速度の範囲内なら、市街地でも高速道路でも運転はしやすい。実用性も低くない。しかし、車載技術やインテリアの質感、運転体験などは期待に届いていない。英国の場合、総合的なコスパでMG 4を超えてはいない。

◯:ソフト指向なサスペンション 広々としていて実用的な車内 低価格の割に航続距離が長い
△:インフォテイメント・システムのユーザーインターフェース 車内の科学的な匂い やや落ち着かない乗り心地 おっとり気味のステアリング

BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)のスペック

英国価格:3万195ポンド(約579万円)
全長:4290mm
全幅:1770mm
全高:1570mm
最高速度:160km/h
0-100km/h加速:7.0秒
航続距離:426km
電費:7.0km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1658kg
パワートレイン:AC非同期モーター
駆動用バッテリー:60.4kWh
急速充電能力:88kW
最高出力:203ps
最大トルク:29.5kg-m
ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    サム・フィリップス

    Sam Phillips

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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